----- 山 - 行 - 記 - 録 -----
 


     
 
探検隊、幻冬の滝を目指す!
2010/08/08

 日原に幻冬の滝・・・という正式な名称の滝はない。ただ、何度もそばには行っているのだが、一度たりとも滝を間近に見たことはなく、人が近づくことを拒んでいるような滝がある。滝上の尾根からは、森が緑の葉で生い茂る季節には見え辛く、冬木立の時でなければ滝はその全貌を現さない。この日原本谷を豪快に流れ落ちる滝のことを、私はいつしか「幻冬の滝」と呼ぶようになった。

 そしてこの日、探検隊はその滝を目指して日原本谷の遡行に挑んだ。本来、去年に予定をしていたことなのだが、決行日になると必ず雨となり、なかなか近付くことを滝は許してくれなかった。しかし今回は朝から晴天で、午後からも天候の急変はなさそうである。探検隊は今日こそはと意気込んで、ヒデさんの愛車で日原林道へと滑り込んだ。

 いつもの場所に車を止め、林道から谷へと森の中を下降して行く。林床には至るところでキノコが顔を出し、ゆっくり撮影したい衝動に駆られるが、今回だけは滝が優先である。リュックを谷底よりかなり高い場所に置き、必要なものだけを携えて苔むした岩場を降りて谷筋に至る。

 この谷を遡れば、滝に到達することは間違いないが、果たして我々がそこまで行けるのやら・・・。なにせ探検隊は沢登りなどの経験も無く、ましてやそのような装備など持ち合わせていないのである。秩父の事故の直後でもあり、当然無理はできない。幸いなことに目の前の谷は幅も広く、浅瀬を選んで進めば危険ではなさそうである。

 探検隊はズボンを膝の上まで捲くり上げ、足にはサンダルという安易なイデタチではあるが、流れを何度か横切りながら上流へと進んで行く。すると流れの中に、ツガの巨木が横たわる場所へ出た。(写真左) 恐らく倒伏した後に、上流から流されてきたものだろうが、その存在感は不思議とその場所にマッチして、谷の景観にインパクトを与えていた。

 そこからさらに上流を目指してルートを模索する。目的の幻冬の滝からは、地響きのような瀑音が聞こえてくる。しかし、今まで広かった谷の幅が次第に狭くなり、流れの中に浅瀬が見当たらなくなってきた。それでもなんとか前に進んで行くと、その狭くなった谷に、大岩が流れを半分塞ぐように立ちはだかっているではないか。(写真中) 滝まではあと30mほどだというのに・・・。

 その岩を乗り越えるにはあまりに大きく、流れの中を進むには深く速すぎである。残念だが、ここは潔く諦めるしかない。滝壺から舞い上がる水煙が、わずかに見えるところまで来ているというのに、滝はその姿を見せようとはしなかった。きっと、沢登りをする人達にしてみれば、何のことはない急流の瀬かもしれないが、我々はこの分野ではド素人である。ここまで来れて滝壺に迫った、というだけでも充分であろう。

 帰り際に滝を見下ろす尾根に登ってみたが、やはり生い茂る木々の葉が緑のベールとなり、滝を曖昧にしか見せてくれない。(写真右) しかし、探検隊はまだ望みを捨てたわけではない。いつの日にか必ず、あの滝を前に三人で記念写真を撮ろうと密かに誓いあったのである。

 
     


     
 
探検隊、熊宿の森へ
2010/07/25

衝撃の倒伏から一年弱・・・
4ヶ月ぶりの探検隊は、その熊宿のトチノキ眠る熊宿の森へ、慰霊の想いを胸に久しぶりに足を運ぶことにした。天気予報では午後6時以降に雨ということだが、それはあくまでも平地の話であり、標高1000mあたりでは全くあてにならない。朝から猛暑の予感を漂わせながら、太陽はジリジリと陽射しを強めているが、今日は空と相談しながらの山行になりそうだ。

 いつものとおり、hideさんの車で日原林道へ滑り込む。緑濃い林道には咲く花も少なくなっているが、リョウブの白い花が所々で目に付く。名栗沢を抜け、まずは天狗のカツラへご挨拶に伺うことにした。今まで探検隊は、なぜかこの巨樹のところへ行くのが夕方近くになっていたのだが、この日は初めて朝の時間帯にそのお姿を仰ぎ見ることができた。
「なんだお前達、今日はこんな時間に珍しいじゃないか。」
と言われているような・・・気がした。

 それから林道に戻り、さらに奥地の熊宿の森へと忍び込む。森が植林帯から自然林に変わると、林床にいろいろな種類のキノコが目に付く。赤、白、黄色、茶色、こげ茶と色も様々で、思わずしゃがみ込んで写真を撮ってしまう。やがて日原川の瀬音が大きくなると、そこには見慣れた樹形の巨樹がある。蝋燭のトチノキだ。この生と死の両方を抱えた巨樹は、いつも私の心配の種でもある。以前より腐食してキノコの量も多くなってはいるが、今年も細枝にはしっかりと大きな葉っぱを広げていた。(写真左) まずは一安心である。

 次に向かうは、かつてこの森の盟主であった「熊宿のトチノキ」。昨年八月、倒伏を確認して以来の再訪であった。想像していたよりは状況の変化はなく、一年近くも前に倒れたとは思えないほど当時の姿を留めていた。しかし、倒伏してポッカリ開いた梢の空間から、スポットライトのように倒れた幹に光が差し込んでいる。(写真中) 二度と見ることの無い雄姿を思い返して、改めてこの巨樹の存在の大きさに想いを馳せた。

 そこから「欠伸のカツラ」までの距離は近いのだが、そこに向かう途中から急に雲行きが怪しくなってきた。遠くで雷鳴も聞こえており、これは間違いなく土砂降りになるだろうと予想がついた。しかし、探検隊は林道へ引き返そうとはしない。それどころか、丁度良い時間なのでお昼にしようということになった。何故なら、我々には馴染みの避難小屋があるからだ。

 その避難小屋(山葵田の作業小屋)で食事をしていると、今まで経験したことのないような強い雷雨が森を包み込んだ。我々は全く濡れることも無く、おにぎりをほお張りながら外を眺めていたが、小屋から見下ろす日原川はみるみる水量を増し、土砂を含んだにごり水となって勢いよく流れ落ちている。雨脚はさらに強くなり、小屋のトタン屋根を叩く音の中に固形物が当たる音が加わった。林床を見ると、なんと雹まで落ちているではないか。探検隊はこの一連の天空ショーを、ただただ呆れて見守った。

 やがて雷鳴が治まり、空が明るくなってきた。しかし、雨脚は強いままで陽射しが差し込んでも降り続けていた。小屋の後ろにあるイタヤカエデの巨木と、欠伸のカツラにも雨は降り注いでいるが、陽射しを受けているせいもあって、今まで見たことも無い神々しい光景を演出している。(写真右) 探検隊は目の前で繰り広げられるその光景を、今度はうっとりしながら見守っていた。

 
     


     
 
懸崖のツガ見学
2010/07/18

 今回は、どこに行ったかはヒミツである。以前より撮影をしようと思いながらタイミングを失っていたが、今日は「懸崖のツガ」という巨樹と、心行くまで見詰め合おう?と心に決めていた。三連休の中日で、日原にも大勢の登山客が訪れてはいたが、いつものように誰もいない方向へと足を向けて出発する。

 しかし、暑い・・・。夏はなるべく沢沿いを歩こうと思うのだが、今回の行程は沢どころか、一筋の水の流れも期待できない。森の中が緑の屋根で覆われているので、炎天下に晒されることはないのだが、いかんせん気温の高さにはお手上げである。カメラ機材の量を少し減らしてはいるが、それでも吹き出る汗は止まらない。体中がビッショリで、気持ち悪さにゲンナリしながらも、なんとか目的の「懸崖のツガ」に対面する。

 とにかく凄い場所に根付いた巨樹である。尾根に迫り出した露岩の上に、何百年の歳月を掛けてここまで成長している。日原でも岩の上に根付いた巨樹は数あれど、ここまでのスケールの岩とのコラボは他にないだろう。しかし・・、どうやって撮ろう?・・・。足場が悪く、とりあえずリュックを転落しないように立木に固定する。

 まずは三脚にカメラを取り付けて、なんとか岩の下に移動する。「石の上にも三年」という言葉があるが、まったくこのツガには頭が下がる。が、撮影は見上げながらシャッターを切る。(写真左) さらに真横に移動して、岩の上に伸ばした根にスポットを当てる。(写真中) 足場はさらに悪く、三脚の設置には困難を極めた。おまけにスズメバチに気に入られたようで、体の回りをブンブンと羽音を響かせている。

 それでもなんとか撮影を終えて、その場を離れようかと思ったが、気が変わりこのツガの根元に行ってみることにした。何度も訪れている巨樹ではあるが、その立ち居地にビビッていたので、根元へ行けるのかも判らなかった。とにかく岩の上まで登り上げ、斜面をトラバースしながらツガの上の方に出る。立木を頼りに降りて行くと、急ではあるがなんとか降りられそうである。

 おっ、シカの糞がある。それもまだ生々しい。こんなところにまでシカは何しに来たのだろう、と想いながらも、シカと同じことをやっている自分がいた。そして、とうとう木の根元に立つ!離れて見るよりもかなり大きなツガであった。(写真右) ところで、私にはとても真似は出来ないが、この巨樹の幹回りを一人で計測された方がいる。そんな話も含めて、巨樹・巨木の項に近日公開!!ということで。

 
     


     
 
ハナノキ・トライアングル
2010/07/03

 九月に予定している学生を引率しての森案内の下見を兼ねて、今回は小川谷林道からカロー谷へ入り、作業小屋跡から右岸巡視道を経て、ハンギョウ尾根に至るルートを辿ることにした。

 森林館を出発する時に、遠くで雷鳴が聞こえていたので、森の中では降られてしまいそうだなあ〜・・・と思いながらも、意を決してカロー谷へと向かう。それにしても、ここのところの気温と湿度には少々ウンザリである。林道を辿ってカロー谷に着く頃には、シャツが汗で体に張り付いて気持ちが悪い・・・。

 しかし、そんな暑さもカロー谷へ入ってしまうと、冷たい水の流れのおかげで吹く風も涼しく、谷沿いの巡視道を快適に進むことができた。ただ、忠三の滝上に架かる桟橋(写真左)と、作業小屋跡から右岸に渡る桟橋が、昨日の雨のせいもあってツルツルに滑るのには参った。両橋とも、途中で引き返そうかとも思ったが、手に持つ杖を駆使してなんとか渡り終えた。しかし、かなりのヒヤヒヤものあった。

 そこから右岸巡視道に入ると、一転して暑さが身に沁みる。大した急登でもないのに汗は吹き出てくるので、水分を補給しながらトボトボ歩いていると、やがて森は自然林へと姿を変える。カロー中段線を横切り、そのままハンギョウ尾根へと向かう巡視道を進むと、道下にイヌブナの巨木が見えてくる。下見とは別に、今日の目的の一つにこのイヌブナの撮影があった。冬枯れの時の写真(といってもポジだが・・)は撮影しているが、葉の生い茂る季節に撮りたいと思ってはや数年・・・。今日こそはそのノルマ?をどうにかクリアできたようだ。(写真中)

 巡視道をそのままハンギョウ尾根まで進み、しばらく銀の道沿いに下っていたが、ちょっと道を外れて道なき斜面に足を踏み入れる。このハナノキ尾根を中心とする逆三角の巡視道内にも巨木が多く、ブナ、イタヤカエデ、ケヤキ、ミズナラなどの巨木を見ることができる。なかでもここ日原では、僅か一本しか見つかっていないウダイカンバの巨木がここにはあるのだ。

 そんな巨木を見上げながら、ふと下に目やると、枯れた落ち葉で地味なはずの林床に白く輝くものがある。何だろう?・・・と思って近づくと、落ち枝にとまった蛾のようである。(写真右) しかし美しい・・。後で知ったことだが、オオミズアオという名前を持つ蛾で、学名ではギリシャ神話のアルテミス、「月の女神」と呼ばれる蛾なのだそうな。夜行性だからだろうか。カメラのフラッシュにも、全く動じることもなくじっとしていてくれた。

 その後尾根を降りて行くと、日本ザルの群れゆっくりと移動していた。距離さえ保てば逃げはしないのだが、こちらも尾根を下って帰らなければならない。サルには悪いが道を空けてもらうことにした。サルたちのいたところには、キノコの食べかけがあちこちに散乱している。食事中に申し訳ないことをした。

 
     


     
 
まずは一石山大権現のツガから
2010/06/06

 いろいろなシガラミ?から山へ行くタイミングを失っていたが、桜咲く前回の山行からすでに一ヶ月以上の時が経過してしまった。行きたい所、撮りたいものがこの時期にあったのだが、何かと不都合が続くとこうしたものであろう。ザンネンだがまた来年が来るのを待つことにしよう。

 私的なのことではあるが、以前パソコンの操作ミスから、昨年撮影した画像データのほとんどを失ってしまった私にとって、そのデータを取り戻すべく今回の撮影の照準は、「一石山大権現のツガ」にすることにした。

 この秀麗のツガは、一石山大権現、つまり日原鍾乳洞の上に位置しており、小川谷橋からもその姿を確認できる。当然、鍾乳洞から登り上げる道などはないので、集落からカロー小屋跡へ続く巡視道を進むことになるが、意外にも簡単に辿り付けるアリガタイ存在なのである。

 ただ、この巨木の立つ斜面はキツイ。キツイから見事な樹形にもなるのだが、これを撮影するとなると斜面を降りて木の下に回ることを余儀なくされる。私の場合、一眼デジでの撮影には三脚を常用するので、そんな斜面の移動も、撮影そのものも結構キツイ。おまけに昨日降り続いた雨のせいで、その斜面も滑りやすいときている。

 さらに、この時期撮影者を悩ますのが、小バエのような虫の存在だろう。動かないでいると、それこそ虫に集られる状態で、もちろんカメラにも遠慮はない。こんな虫を追い払いながら、足場の悪い斜面で撮影を繰り返す。逆光に近い状態で、撮影には不向きではあるが、ここは逆光でしか撮れない作品を心がける。(写真左)

 ある程度ナットクいくまで撮影が出来たので、そのまま巡視道を進み、名も無き小さな尾根から取り付いて「ヨコスズの雄ブナ」にも久しぶりの対面を果たす。(写真中) ハルゼミが鳴く森の中で耳を澄ましていると、親鳥にエサをねだる雛鳥の鳴き声が聞こえてくる。どこに巣があるのだろう・・と目を凝らしてみたが、さすがにこれだけ葉が生い茂っていると見通しが利かなかった。どんな鳥の巣だったのだろうか。

 雄ブナの斜面からそのまま尾根筋まで登り上げると、木々の葉の色はまだ浅く、新緑の名残をとどめていた。森は緑のフィルターに透過した柔らかい光の色に包まれて、なんとなく海の中にいるような錯覚に陥りそうである。(写真右)

 林床には、昨年大量に落下したミズナラの実が、小さな若葉を広げてあちこちに根付いていた。この中から巨木になれる逸材は現れるのだろうか・・・。そんなことを考えながら、涼しげな風が流れる尾根を下り始めた。

 
     


     
 
小川谷桜紀行
2010/05/02

 金岱山の登り口になる籠岩下から登山道を少し登ると、切り立った岩の上に「根っぱり桜」と呼ばれる桜がある。日原集落の対岸の斜面では、カスミザクラが満開を迎えているようなので、同じくらいの標高になるこの桜も見頃ではないかと思い、今日の撮影の標的の一つにすることにした。

 今回も300mm砲と砲台を装備し、集落から金岱山登山口まで鍾乳洞観光の人達の流れに乗って小川谷林道へと歩いて行く。小川谷橋から見るヨコスズ尾根の山々は、中腹くらいまで新緑が進み、所々に桜の姿も見えて「根っぱり桜」への期待は嫌が上でも高まった。

 そして登山口に到着して登り始めると、なんだか妙に桜の花びらが地面に落ちていることに気付いた。膨らんだ期待は不安へと変わり、さらに登ると落胆へと変わり果ててしまった。私は、根っぱり桜がずっとカスミザクラだと思っていたのだが、どうやらその正体はヤマザクラだったようである。

 根っぱり桜はほぼ葉桜となり、枝先に花を僅かに残すのみの姿になっていた。仕方ない・・・来年またチャレンジだ・・と思って見つめていると、桜は谷から吹き上げる緩やかな風に枝葉を揺らし、残された僅かな花を散らしているではないか・・・。私の落胆振りを哀れんで、慰めに最後の見せ場を作ってくれたのだろうか。(写真左)

 そこから林道に降りて、小川谷を上りながら目に付く山桜を狙っていくことにした。林道からは多くの山桜が見られるが、写真にするにはそれなりの景観でなければシャッターは押せない。木々の枝を避けながら、アングルを探し、望遠レンズで仕留めていく。(写真中)

 途中少し雨がぱらついたりして、湿度があるので空気がクリアでない。望遠レンズだと空間を圧縮するために、見た目以上に霞がかった画像になる。しかし、見方によっては日本画調の雰囲気を持つおもしろい写真かもしれない。(写真右)

 どんどん上流に進んで行くと、新たに桜は現れ、とうとう籠岩から4kmほど進んだことになる。根っぱり桜は葉桜になっていたが、ここまで登ると林道沿いのヤマザクラは満開だった。そして、形の良いヤマザクラを撮影している時点で、時計は午後4時を過ぎていた。

 まずい・・・。ここから森林館まで6kmくらいはあるだろうか。できれば5時15分くらいには帰り着きたかった。リュックの中の300mmと肩に担いだ大型の三脚がうらめしい。今日は大活躍をしてくれたコンビだが、やはり重いものは重い。とにかくできるだけ早足で林道を下り、やっと森林館に着いたころは普通の山登りよりも遥かに疲労困憊だった。すでに時間は5時20分を回っておりました。

 
     


     
 
山桜紀行3
2010/04/29

 今日あたりは日原集落から見る対岸の山肌に、山桜が点在しているだろうと思っていたのだが、思ったほどではなかった。稲村岩尾根の桜樹林もまだ先のようで、これ以上標高を上げても山桜は見られそうにない。それよりも、先週撮影した倉沢橋の氷川側にあるスギ林の対岸に、カスミザクラが見頃を迎えていたので、今回も森林館から300mm砲と砲台を持ち出してバスで倉沢に行くことにした。

 森林館でバスの時刻を見間違えてしまい、東日原バス停に行くとまだ30分も時間がある。それでは一原まで歩いて下ろうと日原街道を歩いていると、にわかに雲行きが怪しくなってきた。一原バス停に着くころにはパラパラと降りだし、雨脚はどんどん強くなっていった。幸い一原には奥多摩工業のプレハブ小屋がああり、軒先にいればほとんど濡れることはなかったが、奥多摩駅行のバスが来た頃の雨は土砂降りで、雨をしのげる場所のない倉沢バス停に行ったところでどうしようもない・・・。断腸の想い?でバスを見送ることにした。

 雨脚が弱まり、空が明るくなり始めたのは11時を回った頃で、次のバスが来るまで1時間半ほども雨宿りをしていたことになる。天気予報では確か昼過ぎににわか雨が来るとは言っていたが、東京の最西端の日原ではずっと早かったようである。遅くなってしまったが、とりあえずバスで倉沢に向かうことにした。

 そのスギ林の対岸にある山桜は、先週は山桜の盛りであったが、今回はカスミザクラが出迎えてくれた。日原街道からなんとかスギ林の間隙を縫って良いポイントを狙うが、やはり全体的には無理がある。望遠レンズでイイとこ撮りをすることにした。(写真左)

 しばらくそのあたりで撮影をしていたが、スギ林にあるバス停の名前を何気なく見てみると、なんと「桜平(さくらだいら)」と書かれているではないか!以前からそこに山桜が多いことは知っていたが、それに因んだ名前のバス停だったとはこの時初めて知り、私はなんだか興奮してしまった。

 その桜平バス停はトヤド尾根の末端にあたるが、その川乗側の斜面が伐採されて、新たに植林がなされている。植林された木々はまだ幼く、日原街道から見ると尾根筋にある木々までよく見渡せる。その尾根に赤味の強い満開の桜を見つけてしまった。オオヤマザクラだろうか?しかし、この標高では見られないと思うが・・・。時間はまだある。これは見に行くしかない。バス停近くの登り口から、その桜を目指して近づいてみることにした。

 これが以外に急登であった。300mm砲と砲台がなければ大したことはないが、さすがに登り上げるには息が切れた。しかし、尾根筋まで来ると意外な景色に思わず声を上げてしまった。川乗山や大岳山などが見渡せる絶好の展望なのである。(写真中) 植林された木々が大きくなるまでは、この景色を楽しむことができるだろう。

 さて、肝心の赤味を帯びた桜は・・・というと、やはりヤマザクラであった。葉の色が赤なので、下からは全体的にピンクが強いように見えたのだが、近づいて見ると岩の上に根付いたヤマザクラであった。それほど大きくはないが、青空に映えてことのほか美しい。(写真右) 風が吹くと僅かながら花びらを散らし、その花びらが青空に融けていくようでしばし見惚れてしまった。今年は完全に山桜にイカレテしまっているようだ。 

 
     


     
 
倉沢・山桜紀行 2
2010/04/18

 先週に引き続き、今回も山桜狙いである。倉沢橋周辺では丁度盛りを迎え、日原集落の入口にある「歓待の桜」も八分咲きといったところだろうか。森林館から今日も、300mmの望遠レンズと大型の三脚を持ち出して、まずはその「歓待の桜」に向かうことにした。

 先日の雪で鷹ノ巣山は白く装い、この季節としては異例の雪山を背景に咲き誇る山桜という、まるで北国の春を思わせるシチュエーションである。(写真左) なにせ41年ぶりの遅い雪とあって、このチャンスを逃したら二度とこの景色とは巡り合えないかもしれない。欲を言えば満開であったら・・・と思わないではないが、それは贅沢というものだ。この日、この場に居合わせたことに感謝して、思う存分撮影させてもらった。

 歓待の桜は、ヤマザクラ特有の得も言われぬ匂いを漂わせていた。思い切り深呼吸すると幸せな陶酔感に包まれて、ますます山桜の虜になってしまいそうである。すぐそばにはソメイヨシノも咲き競っているが、やはりその気品溢れる花の香りを満喫すると、モノが違うと言わざろうえない。

 歓待の桜を撮り終えて、そのまま一原バス停へと下り、バスを使って倉沢に着いた。先週はポツポツ程度だった満開の桜も、今日はその数を増してまさに見頃といった感がある。しかし、「ここっ!」という撮影ポイントはことごとく木々の枝が邪魔をして、林道からの撮影はあきらめるしかなかった。仕方なく倉沢橋の周辺で、「いかにも見頃!」と写るような工作を試みる。先週は七分咲きだった林道入口のヤマザクラを前面にして、対岸の斜面に咲く桜をバランス良く回りに配置してみた。(写真中) 工作の出来は如何であろうか・・・。

 倉沢林道に限らず、倉沢橋の周辺には他にも多くの山桜を見ることができた。橋の上から見る日原川右岸斜面にも、微妙に色の違うヤマザクラが点在し、そこを望遠レンズで切り取ってゆく。日原川右岸にはまだ見所も多いが、杉林が邪魔をしてなかなか良いアングルが取れない。意を決して?、足場の悪いその杉林に踏み込んでアングルを探ると、一箇所だけポッカリ空いた空間を見つけた。点在する山桜全体を撮れるわけではないが、一番撮りたい場所はなんとか狙える。三脚と自分の足場を確保して、望遠レンズに武装したカメラに想いを託す。(写真右)

 調べればまだまだ良い撮影場所はあるかもしれないが、今回は時間切れである。16時03分のバスで東日原に帰らなければ、また先週のように重い機材を抱えて日原トンネルをトボトボ歩かなければならない。そそくさと荷物をまとめて杉林を登り、日原街道に出た。このポイントは、また来年再チャレンジである。

 
     


     
 
倉沢・山桜紀行
2010/04/11

 青梅から日原へ向かう車窓の景色を眺めながら、今日の行き先をあれこれ考えていたが、山桜の開花状況を見ていると、倉沢あたりでも咲き始めているのでは?と思えてきた。そして倉沢橋まで来て見ると、予想通りその周辺や倉沢谷左岸の斜面には、早くも満開を迎えた山桜も数本あった。こうなると今日は、ここにじっくりと腰を据えて撮影に没頭することにした。

 桜の撮影には、望遠レンズは欠かせない。いつもは森林館に置かせてもらっている300mmF4のレンズや、4kg超の三脚を引っ張り出し、さらにリュックには80〜200mmF2.8、 28〜70mmF2.8、 24mmF2.8、 100mmマクロF2.8と万全を期して倉沢に望んだ。カメラに詳しい方ならご存知だろうが、この機材を運ぶとなると相当ツライ。山登りをするならこんな無理はしないが、幸い今日はほとんど移動はない。(と、思っていたが・・・)今年初めての山桜の撮影を、存分に満喫したいと気分は上々である。

 倉沢谷左岸の斜面は、山桜の多く見られるポイントだが、この日は4本ほどが見頃であった。しかし、倉沢林道から撮影を試みるが、木々の枝が邪魔をしてなかなか良いアングルが得られない。あちこち移動もしてみたが、対岸がクリアに開けた場所は見つからなかった。かろうじて空いた枝の間隙を縫って、手前にある咲き始めの桜をボカシながら対岸の桜を狙ってみた。(写真左)

 結局、対岸の桜は満足のいく撮影をできなかったが、気持ちを切り換えて倉沢橋のたもとにある数本の桜を狙うことにした。氷川側から倉沢橋に差し掛かる左手前に、今日満開を迎えたヤマザクラがあった。とくに樹形が美しいわけではないが、谷底から吹き上がる上昇気流に花びらを少しだけ散らし、なんとも言えぬ風情がある。橋の上を移動しながら望遠レンズで切り取っていく。(写真中)

 倉沢林道側の橋のたもとにも七分咲きくらいのヤマザクラがあり、これは道の脇にあるために花の近撮に向いている。やはりこれも望遠レンズで、花と葉のバランスの良い場所を選んで切り取る。ファインダー越しに見るヤマザクラの花を見ていると、そのあまりに清楚で上品な美しさに時間を忘れてしまいそうである。

 この後倉沢林道に入り、スミレの様子を見に行くことにした。陽当たりの良い林道脇には、必ずと言っていいほどスミレの姿が見られた。スミレは種類ごとに住み分けをしているようで、エイザンはエイザン、ヒナはヒナというように群落を形成していた。前回、倉沢林道はハナネコノメが咲き誇るハナネコロードであったが、今回は見事にスミレロードに様変わりしていた。

 天気予報では夕方から雨が降り出すと言っていたが、八幡滝辺りまで来るとポツリポツリと雨粒が落ちてきた。倉沢発16:03のバスに乗って東日原に帰る予定だったので、そこから踵を返してバス停に向かおうとしたが、予想以上に雨脚が強くなってしまった。仕方なく雨具を着てそのまま林道を下っていると、しばらくしてまた空が明るくなり、次第に雨は上がってしまった。そしてまた、倉沢林道入り口にあるヤマザクラの前に出た。

 先ほどの雨は、ヤマザクラの花や葉を水滴で飾り、これはもう「撮るしかない!」という被写体である。時間は15:50・・・バスは諦めるしかない。再びリュックから望遠レンズを取り出し、三脚に取り付けて花の近撮を試みる。(写真右) 撮影している背後でバスはゆうゆうと通り過ぎて行った。

 さて、ここからは森林館まで歩いて行くしかない。カメラ機材が詰まったリュックと、肩に担いだ三脚が重い・・・。日原トンネルをトボトボと歩きながら、あの雨の雫滴る桜を見られたのだから、仕方ないなあ〜と割り切ったのであった。

 
     


     
 
ウヒョウ〜(雨氷)!
2010/03/27

 今年の2月20、春の気配も漂い始めた奥倉沢で、雪山には一応別れを告げたはずだったのだが、一月以上を過ぎた今日も雪山に迎えられてしまった・・・。天気予報では昼間は晴れで、平地の気温は12℃になるという予想だったが、山はやはり山である。朝の集落の気温は2℃で、ここのところ降った雪が山々を白く覆い寒々としている。とりあえず、予定通り一杯水あたりに行ってみることにした。

 集落から始まる急登では、ほとんど見られなかった積雪も、ヨコスズ尾根の巻き道に出る手前あたりからシャーベット状となり、登り上げるにしたがってその量は増していった。締まった雪なら靴底のグリップが効いて問題はないが、滝入りの峰のアブナイ巻き道あたりでも雪質が悪く、足元はかなり滑りやすい。普段登るよりも疲労が濃い・・・。

 しかし、両替場あたりから雪質は締まり、歩くにもさほど気を使わなくなった。この先は急登もないなだらかな尾根が続き、場所によってはミズナラやブナの巨木が登山道の脇で迎えてくれる。(写真左) 木々の合間から見える山々も白く雪に覆われ、完全に冬山の様相を呈している。標高が上がるにつれ、気温もかなり下がり雪も降り出してきた。そうこうしているうちに、やっと一杯水避難小屋に到着する。

 避難小屋の軒にはツララが下がり(写真中)、小屋の前にある木のテーブルとイスには10cm以上の雪が積もっている。丁度昼時だったので、小屋の中に入って食事を摂ることにした。中には3人のオヤジさま達がいて、これから天目山に登って、川乗谷の方から下山するそうである。この雪山に、なんとも元気な方々である。

 この日は、蕎麦粒山手前にある登山道沿いのブナが狙いだったが、その手前で足が止まってしまった。木々の枝が白くなっているので樹氷かな?と思ったが、よ〜く見ると枝先が氷ですっぽり覆われている。あたり一帯の木々の枝先が全てそうなっているのだ。どうやら雨氷(うひょう あめごおり)という現象らしい。日原の森を長いことウロついているが、初めてみるその驚きにブナのことはすっかり忘れていた。

 この後天候は急激に回復して、陽射しが覗き青空が拡がってきた。するとどうだろう。この雨氷はパキパキと音を立てながら、どんどん枝先から落ちてくるではないか。その落ち始める少し前に、雨氷で覆われた木々を青空を背景に撮影してみた。(写真右) 都合で4時頃までには集落に戻りたかったので、残念ながらここでギリギリまでねばって下山することにした。

 
     


 
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