----- 山 - 行 - 記 - 録 -----
 


     
 
金岱山、再び。
2011/09/17

先週に引き続き、今回も金岱山に向かう。現在も鍾乳洞先の小川谷林道は、事実上?歩行禁止となっているので、一石山神社裏からのルートを辿ることになった。

しかし、先週と同様に気温も湿度も高く、登り始めの急登は全く無風の中で全身汗まみれとなってしまった。まだ体が山に慣れていないとはいえ、高気温での低山の登山はかなりの危険を伴う。これも一歩間違えば、先週の熱中症の二の舞になるところであった。まあ、カメラ機材さえなかったら、こんな大汗をかくこともないのだけれど・・・。

急登をクリアするとベンチのある尾根に出る。ここは風が吹き渡る。今までの汗地獄から、まさに天国に辿りついたような涼やかな風が火照った体に心地よい。水分をガボガボと補給して、しばらく休憩。ここまで来たら、あとはタワ尾根への目途が立つ。おもむろに立ち上がると、先程までの元気のなさがうそのように歩を進める。と、調子良く登っていたら、タワ尾根手前の急登で足を滑らして、コケそうになった。

それにしても人がいない。メインの登山口が使えないことが原因だろうが、タワ尾根筋がこれほど人気を感じないとはいつ以来のことであろうか。確か、まだ金岱山のミズナラがほとんど知られていなかった頃も、このような感じだったような気がする。尾根筋にはキノコも多く見られ、最も美しいキノコと言われるタマゴタケも随所に見られた。(写真左)

金岱山のミズナラも、この日に訪問したのは私だけだったかもしれない。何かこの大ミズナラも、訪問者の激減で少し野生に返ったようであり、今まで見た時よりも迫力が増しているようだ。(写真中) 大ミズナラを前にして、ここで昼食を摂るのも久しぶりである。私以外の誰もいない空間で、幸せな時間を満喫させてもらった。

その後、金岱山のオオヤマザクラにも訪問したのだが、なんと鱒茸(マスタケ)が付いてしまっていた。(写真右) もともとかなり弱っていた巨木で、幹の半分はすでに生気を感じられない状態だった。しかし、現実にこうしてキノコという死の兆候が現れると、少しばかり感傷的になってしまう。

ちなみにこのマスタケ、人によっては舞茸よりも珍重される食べられるキノコで、硬くなってしまう前の幼菌の頃がベストなのだそうだ。この写真以外の場所にもう一塊があって、それこそはまさに食べ頃であった。が、持ち帰ったわけではない。(きっぱり)

 
     


     
 
山行は計画的に・・
2011/09/11

な、なんと四ヶ月ぶりの山である。体は完全にナマッており、とてもまともな山登りが出来るはずもないのだが、どうも以前から気になっていたルートを登りたくなった。それは、日原林道の渓流釣り場のあたりから、そのままタワ尾根に登り上げてしまおうというのである。しかし、これが大失敗! 二度とこのルートを使って登ることはないと心に誓った。

このルートは、かつて地元の人に聞いて登り口だけは分かっていたのだが、いつか試してみようと考えていた。まあ、登り口さえ分かっていれば、後はなんとか道は探せるだろうと思ったのだが、現実はそう甘くはなかった。

それは登り始めのスギの人工林で、全く踏み跡が探せなかったことから始まった。しかし、まあこのまま登り上げたらそのうち踏み跡も見つかるだろうと思い、自分でルートを考えながら先へ進むことにした。しかし、いくら登れど踏み後らしきものはない。この日は気温も湿度も高め、さらにはスギの人工林のある場所は窪地にあたり、風が全く通らないのである。

体はかなりの発汗と、いつまでも続く急登に息も切れ切れになる。さらに、スギの落枝は足を乗せると滑りやすく、スピードの鈍った登りの足に拍車をかける。下るにはもう遅い・・・。「登るしかないか・・」と覚悟を決め、何度も休みながら登っていると、やがて涼しい風を感じるようになってきた。上を見上げると、岩場が見える。「タワ尾根だ!」疲れきった体を励まして、なんとか見慣れた尾根筋に辿りついた。

尾根に着くなり座り込み、しばらく心地よい風に身を任せる。しかし、どうも頭が重い。あまりの発汗に軽い熱中症を起こしてしまったようだ。持ち合わせていた厚紙を団扇がわりにして、顔や首筋に風を送りながら冷やし、水分を補給すると少しは体も軽くなってきた。

しかし、金岱山のミズナラに行く元気はない。仕方なく燕岩に下って風にしばらく吹かれることにした。燕岩はさすがに涼しい。回りを見渡せば、木々の葉が濃い緑を失い、僅かに色付き始めているようだ。(写真左)(写真中)

思う存分くつろいだ燕岩を後にして、不甲斐ないが今日は下山することにした。やはり体調がイマイチである。帰りは一石山神社の裏手に出るルートを辿ることにした。この道も十年以上使ってはいなかったが、今も登山者に利用されていることもあり、しっかりとした踏み跡のお陰で道に迷うこともなかった。

神社に近付いた道沿いに、見栄えのするモミの巨木がある。(写真右) パッと見て4mを超えると思ったが、計測してみると3.92mともう一息だった。しかし、スーッと太く伸びた幹の形状が素晴らしく、近いうちにモミの巨木として掲載しようと思っている。

 
     


     
 
山桜狙い
2011/04/30

今年は狙っていた山桜がいくつもあったのだが、休みの日の天候や他の予定も重なって、とうとう四月も終わりになってしまった。山桜の撮影としては随分遅いスタートになってしまったが、今日も含めてあと2回ほどはそのチャンスがあるのではないかと思っている。

日原に到着すると、その入口にある「歓待の桜」はすでに葉桜となり、集落より標高を上げないと満開の山桜にはお目に掛かれないようだ。毎年のことながら、森林館に置かせていただいている4kg超の三脚と300mmの望遠レンズを引っ張りだし、小川谷林道から気に入った山桜を狙い打ちすうことにした。

鍾乳洞を過ぎて籠岩下まで来ると、昨年時期を逸した「根っぱり桜」のことが気になった。5月2日の時点で残された花はもはや少なく、気落ちした私に「根っぱり桜」は花吹雪の歓迎をしてくれたものだった。果たして今年はどうなのだろう。金岱山登山口を登り始めると、登山道に桜の花びらが目立ち始める。それは桜に近付くほどに多くなり、今年も遅かったか・・・と思わずにはいられなかった。そして桜のところまで登り上げてよ〜く見てみると、意外にも花はかなり残っていた。もちろん盛りは過ぎてはいるが、なんとか写真になりそうである。日原発行の金岱山巨樹コースの地図に記載されている「根っぱり桜」が、ようやくこのサイトにもアップできる目途が立った。(写真左)

再び小川谷林道に降りて、上流の山桜を目指して足を進める。芽吹き始めた木々の若葉の中に、今が盛りと咲き誇る山桜の輝きが目を奪う。(写真中) 一本では何気ない山桜も、こうして溢れんばかりの春のエネルギーに包まれることで、美しさがなんと引き立つことか。我を忘れて見とれてしまいそうである。

この時期になると、イタヤカエデの黄色の花も目立ち始める。桜と桜の間にイタヤカエデを挟んで撮影してみた。(写真右) いつもなら愛用の24〜70mmのズームレンズで、ほとんどの撮影をこなしてしまうが、山桜の時期だけは望遠レンズが主役である。中でも300mmの単体は、毎年山桜の撮影のにしか使用していない秘蔵っ子ではあるが、今日だけは70%くらいの頻度ではなかっただろうか。

山桜の撮影になると、私はいわゆる「入る」状態となってしまい時間を忘れてしまう。気がつけば時間は16時に近付いていた。森林館の閉館が17時なので、足早に帰らなければならない。しかし、これも毎年のことながら、重たい三脚とレンズが足取りを重くする。山桜の撮影での心地よい余韻と、疲れきった体を引きずりながらなんとか帰り着くことができた。

[遭遇生物] ニホンザル カモシカ シジュウカラ コガラ 

 
     


     
 
巨木三体
2011/03/27

ワタシは数年前から発症した花粉症患者だが、今最もスギ花粉の飛散量の多いこの時期に、思い切って山に飛び込んでみることにした。ちなみに薬を服用したり、注射で予防しているわけではない。とりあえず、普段はマスクを着用しているだけである。

目的地はハナノキ尾根で、以前から撮影しようと決めていたケヤキとウダイカンバの巨木への訪問である。特にウダイカンバの巨木は珍しく、幹周りが3mを超えるものとなると日原においてはこの一本しかない。勇んで森林館から出発して、小川谷林道のハナノキ尾根の登り口までやって来た。

そして、マスクを着用したまま登り始めると、当然ながら息苦しく、すぐに外すことになる。だからと言ってすぐにクシャミや目の痒みに襲われることはないのだが、そのツケは帰りの電車あたりから徐々に現れ始めるのがいつものパターンだ。しかし、今更それを気にしていても仕方ない。息を切らして目的地まで登り上げた。

最初にケヤキを撮影しようと思ったが、その手前にあるイタヤカエデが意外に大きいのが気になった。枝振りも見事で、山ブドウの蔓を絡ませた姿はなかなか野性的で見栄えがする。幹周りを測定してみると、315cmと堂々たる巨木である。背景の雪山をバックに枝振りの良いところを写してみた。(写真左)

そこからすぐ先にケヤキの巨木は見えているが、これがちょっとユニークな樹形をしている。かつては地上2mくらいから二又に分かれた樹形であったものが、一方の大枝を失ったことでそこにポッカリと穴が開いている。しかし、このケヤキは近付くとかなりの存在感があり、その幹周りは430cmにもなる。残された一本の枝を真上に伸ばし、樹高もそこそこありそうだ。(写真中)

さらに、ケヤキから30mほど離れた尾根上にウダイカンバの巨木はある。ウダイカンバとミズメはよく似ていて、樹皮だけではどちらかを判別するのは難しい。しかし、この巨木は以前見たときに葉の確認をしており、これはミズメよりはるかに大きい葉を持つウダイカンバであった。マイナーな巨木ではあるが、その風貌はなかなかの役者ぶりである。(写真右)

さて、ここを最後に山を下ったわけだが、やはり帰りの電車の中で花粉症の症状が一気に悪化した。当然マスクは着用したが、今更間に合うわけもなく、山でタップリ吸い込んだ花粉は目の痒みと鼻からの洪水を引き起こし、モウロウとして我が家へと帰り着いた。恐るべし・・・花粉という名の催涙ガス。

[遭遇生物]カモシカ カケス マヒワ エナガ トビ 

 
     


     
 
冬と春の狭間で
2011/03/05

昨日までの寒さは緩み、どうやら今日は比較的暖かい一日となりそうだ。三月に入り、倉沢のハナネコノメはどんなものだろうと探りに行くことにした。

倉沢林道をしばらく進むと、ハナネコはあったが日陰にあるものはさすがにまだ成長が遅く、葉は小さくて蕾は白ゴマの粒よりも細かい。ここはまだまだかな〜と思いながら林道を上流に向かって歩いて行くと、水が滴り落ちる苔むした岩場に差し掛かる。毎年ここはハナネコの咲き誇る水場で、日当たりも良く少し期待が持てる。目を凝らして探してみると・・・、あった。少ないながらも数輪はしっかり花開いていた。(写真左) 春なんだなぁ〜とちょっと感慨にふける。

その後、大きく移動して犬麦谷上流部に行くことにした。標高では倉沢より500m以上も高いだろうか。ところが、風の吹かない日当たりの良い場所では驚くほど暖かく、されど日陰の谷では雪も残り身震いするほどの寒さになる。どうやらここでは、冬と春が共存しているようだ。

犬麦谷林道から犬麦谷へと入り、ガレた沢を登りはじめるとすぐに、氷のオブジェが次々と現れる。(写真中) 沢を抜ける風はさすがに冷たく、雪こそ少ないがやはりここは冬なんだと実感する。

そして、タツマの大滝の下にある15mほどの滝まで足を伸ばす。この滝には丁度日が当たり、優しげな佇まいの滝に温かみが加わった。(写真右) 昨日以前の冷え込みで滝の縁には氷が張り付いていたが、見ているそばから氷が剥がれ落ち、小さな滝壺に豪快に崩れ落ちた。きっとその音は、冬が終わりを告げ、春の始まりを知らせる合図だったに違いない。

[遭遇生物] コガラ、エナガ、ミソサザイ、ウソ、カケス、ニホンザル、

 
     


     
 
風神さんに初詣
2011/02/19

先週は日原へ来てはみたものの、山登りもしていなかったことから今日こそが「登り初め」となる。ここは一つ、森の神である「風神のブナ」に初詣を兼ねて撮影に行くことにした。天気は良いが集落の気温は2〜3℃で、山に入ればマイナスは確実で雪もそこそこあるだろう。好きな木の側になら3時間くらいは離れない私にとって、防寒対策には万全を期さなければならない。

風神さんのある尾根は、登り始めこそ雪は見られなかったが、次第に高度を上げると日陰に雪が残り、さらに登ると日向の尾根にも残っていた。そして風神さんに到着すると、なぜか風神さんのある斜面には雪が疎らにあるだけだった。それでは撮影しようと斜面を降りようとした瞬間、ステンと転んでしまった。斜面が凍っているのである。いくら日向で雪が無いとはいえ、ちょっと侮っていた。幸い体もカメラ機材も問題は無く、手袋とリュックを少し汚した程度で済んだけれど・・・。

しかし、斜面が凍っていると結構大変なのである。まず、撮りたい場所への移動に気を使い、さらにそこに三脚を立てることが容易ではない。足場と三脚の位置が共に滑りやすく、さすがに今回は安全第一でアングルは二の次だった。それでも毎回必ず撮影する、「風神さん」の正面写真はどうにかゲットすることが出来てホッとする。(写真左)

風神さんはこの冬の風雪にも負けず、目立つような枝折れも見当たらなかった。しかし、何度見てもこのブナの枝振りには目を見張る。風神さんは、長年強風に耐えながらこの樹形を造り、そして神となった。(私が勝手に神と呼んでいるだけデス。)敬意を表してちょっと横からパチリ。(写真中)

かなりの時間をここで過ごし、遅い昼食を摂っていると、風神さんの枝でジョウビタキが囀っている。こちらに殺気がないことを察しているのか、あちこちの枝に移動しながら愛敬を振りまいてくれた。その後雪のある尾根を少し登ると、青天の空に冬枯れの木々が美しい。時間もそろそろ帰路へと踵を返さなければならない。本日最後のカットは、天晴れ!の冬空だった。(写真右)

[遭遇生物] ニホンシカ(群) エナガ シジュウカラ ハギマシコ ジョウビタキ 

 
     


     
 
スロ〜スタ〜ト
2011/02/13

気が付けば、二ヶ月以上も山に入っていないことになる。こんなに山に行かなかったのは、いつ以来だろうと考えてみたら、両足を骨折して七ヶ月ほどブランクがあって以来のようだ。それはもう十年ほど前になろうか。しかし、今回は特に体調が悪かったわけではない。休日にいろいろ他の予定が重なったりしたことは確かだが、どうもイマイチ気乗りがしなかったことが原因である。

そして二月も半ばになり、やっと山へ向かおうとの意気込みも芽生えた時、情け無いことに風邪をひいて熱を出してしまった。寝込むほどではなく仕事もこなしていたのだが、山登りをする体調には程遠い。しかし、写真撮影なら何かしら出来るだろうと日原へと向かうことにした。

久しぶりの日原は、山々に先日の雪を残して冬の姿で迎えてくれた。しかし、この日は午後から気温が上がる予報が出ていたので、とりあえず稲村岩の雪が消えないうちにお気に入りの場所から撮影することにした。(写真左) ちょっと雪の量が物足りないが、青空をバックにして清々しい景観だ。久々の山での撮影に時間を忘れそうである。

とはいえ、山に登るほどの気力はない。今日は小川谷林道をとぼとぼ歩きながら、気に入った冬景色をカメラに収めていくことにした。金岱山登山口より上流に林道を進むと、さすがに日陰は雪が多く残り、谷は真冬の様相を呈している。賀老橋の上から小川谷を狙ってみる。(写真中)

さらに上流の方に進むと、私がよく撮影をするサワグルミがある。この木は巨木には少し足りないが、その枝振りが美しく被写体として魅力的である。そして、この木のある場所で小川谷は、大きくUの字を描いて流れを逆方向へと転換していく。このバックグラウンドもまたサワグルミを引き立てる大きな要素であろう。今日の雪景色も手伝って、気分良く撮影させてもらった。(写真右)

ところで、今年始めに新しい標準ズームレンズを購入した。今までのレンズは、カメラの性能に追いついていない旧型のものだったが、今度のものはカメラとの相性は抜群である。今日の撮影は、全てこのレンズを使用したもので、云わば試し撮りの意味も兼ねたものであった。私の山へのモチベーションが上がったのは、このレンズを手に入れたことに尽きる?・・・かも。

[遭遇生物] ニホンザル アオバト? ホウジロ

 
     


     
 
4mチョ〜の白ブナを探す。
2010/11/27

このブナの存在は、今年ある資料を調べていて知ったのだが、発見者はやはり日原スペシャリストのTさんだった。日原で発見されているブナの巨木で、現在幹周が4m以上のものは僅か8本しかない。私自身はこのうち6本を目にしているが、残りの2本のうちの1本の所在を、この時に曖昧ながら知るに至った。

日原の紅葉もすでに盛りを過ぎ、山々には木立の姿がはっきりと見られるようになった。巨樹を探すには、これから雪が降り積もるまでが勝負である。見通しの良い森は、巨樹を見つけやすいこともさることながら、自分のいる位置を知る上でも好都合である。が、そう簡単に目的の巨樹が探せるほど森は甘くない。

まず、だいたいこの辺りにあるといってもそれは地図上のことで、何万本もの木々の中から探すことに変わりはない。この日のキーワードは、「白ブナ」「ハンギョウ尾根」「ハナノキ尾根」のたった三つである。この三つの情報を頼りに、一本の巨樹を探し出そうというわけだ。

どの分野でも同じだが、巨樹探しもやはり経験がものを言う。私は小川谷林道からハナノキ尾根を登り上げ、ハンギョウ尾根の尾根筋に出た。ハンギョウ尾根はマイナーではあるが、そこそこ登山者が利用する道であろう。しかし、そこを歩いた人から大きなブナを見た、という話を聞いたことは無い。ということは、少なくともそのブナは尾根筋ではなく、森の木立の中に隠れていると考えられる。私は尾根筋を離れ、獣道を頼りに木々の中へ進入する。そしてブナの樹形に気を配り、大きな梢を捜して歩く。

しかしなかなか見つからない。4mを超えるミズナラならいくつか目にしたが、目的のブナはその気配も感じられなかった。なにせ私は、そのブナの写真を見たこともなく、どんな特徴があるかも知らないのだ。これでその巨樹を探そうとするのは無謀と思われるかもしれないが、私には一つの確信があった。

この巨樹はTさんが見つけている。あの「風神のブナ」の発見者でもあるTさんが、4mを超えるブナがあったと言えば、倒伏しない限り存在すると私は信用している。探せば必ずある!と思いながら、私はまた新たな獣道に足を向けた。それは、ミズナラの巨樹の脇を抜け、その目を斜面の下に向けた時のことだった。「あれだっ!」苔むしたオーラを放つ幹が目に飛び込んだ瞬間だった。

これから巨樹に近づく時間は、至福の時と言っても過言ではない。かなり急な斜面ではあるが、今までの登りの疲れも忘れて嬉々として下り降りて行く。そのブナは近づくほどに威厳を増し、側に立った時には間違いなく目的のブナであることを確信した。(写真左) それにしても凄い!幹の太さやその造形、斜面に伸びた根の迫力・・・。間違いなく日原トップクラスのスケールを誇るブナである。(写真中、右)

他の木々には目もくれず、このブナだけを探しに登ったこの日の行程だった。私は時間の許す限り、このブナを撮影をしたり、側で食事を摂ったりと贅沢な時間を満喫することが出来た。

 
     


     
 
黄葉の森
2010/11/03

この日の目的は日原一のブナの巨木、[風神のブナ」の黄葉。 去年は黄葉の真っ只中に出逢えて、幸せな時間を過ごしたものだった。今年の紅葉は例年よりは遅れ気味で、まだ早いかな?と思いながらの入山である。

山登りをサボっていた体には、そのツケが重く圧し掛かかる。 山登りって、こんなにきつかったっけ?それでもまあなんとか、息を切らしながらも目的の尾根に近づいてきた。 まだ紅葉には浅い森の中で、一際目立つカエデの黄葉。 木漏れ日に透けたレースの趣があるような・・・。(写真左)

さらに登り上げて尾根へと辿りつく。尾根伝いにしばらく進んで行くと、これまた見事な黄葉のブナ。白く整った樹形に赤味を帯びた黄葉が映える。(写真中)これは「風神のブナ」も期待大である。先ほどの息切れも忘れて、足取りのも軽くまた登り上げて行く。
しかし・・・、やはりまだ早かった。
同じブナでもみ〜んな一緒に黄葉とはいかないようだ。一週間ほど早かっただろうか。(写真右)同じ尾根にあってもブナそれぞれピークが違うものだ。

 
     


     
 
舞茸や〜い!
2010/09/20

 九月に入ってもなかなか夏が終わらず、汗だくになる山行を避けてサボッていたが、ここのところ朝晩の涼しさも心地よくなってきたので、久々に出掛けてみることにした。と言ってもそれには理由があり、そろそろ舞茸が顔を出す頃かなあ〜などという思惑を兼ねての入山である。

 小川谷林道を遡り、とある場所から林道を離れて森の中へ忍び込む。そして、極一部の人だけの間で呼ばれている「天使の庭」という場所に辿り着く。この天使の庭とは、けしてロマンチックだからという意味ではなく、あるメディアで天使の役をやっていた女性をここに連れてきた、というだけのオフザケ的な命名である。

 しかしここには、6m超の「小川谷上のミズナラ」や「小川谷上のケヤキ」(写真左)、 「錐木小屋のイタヤカエデ」(写真中)、 「錐木小屋のシオジ」など巨木の密度が濃いところでもある。今日は舞茸だけが目的ではなく、一応?ホームページに未公開の「小川谷上のケヤキ」と「錐木小屋のイタヤカエデ」をカメラに収める。驚いたのは「小川谷上のケヤキ」の根回り周辺には、スミレが見事な群落をなしてケヤキを取り囲んでいる。ここを天使の庭と呼んでも、まんざら悪くないのかもしれない。(笑)

 ところで、ここには目をつけていた舞茸がある。二年前に見つけた時にはすでに遅く、地団駄を踏んで悔しがった「白舞茸」であった。果たして今日は・・・無い・・・。前回は木の洞の中にあったのだが、今年は見当たらない。しかし、薄暗い洞をしばらく眺めていると、奥に小さな塊が数個光って見えてきた。なんだろう?と思って顔を近づけると、どうやらキノコのようである。

 しかし舞茸ではなさそうだが・・・と思ったが、とりあえずコンデジでフラッシュを発光して撮影してみた。(写真右) その場で拡大してみると、なんとそれは白舞茸の幼菌ではないか。早過ぎたか!とは思ったが、それでもまた見つけられたことに頬は緩む。白舞茸は黒舞茸よりも採取する時期が早く、日原の舞茸はまさにこれから、ということになるだろう。

 
     


 
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