----- 山 - 行 - 記 - 録 -----
 


     
 
残り火を探して
2012/11/18

山から遠ざかってはや半年・・・。特にケガや病ではなかったが、ようやく行く機会に恵まれた。しかし、もはや十一月半ば。日原の紅葉は、集落周辺でもとうにピーク過ぎていた。さて、ここはどこに向かうべきか。日原到着の時刻も遅く奥山へは行けない・・・となると、残る選択は裏山のヨコスズ尾根しかない。

裏山を登り始めると予想通り紅葉の旬には遅すぎたが、それでも燃え残ったような紅葉が所々に見られる。(写真左 ブナ)(写真中 楓)天気は抜けるような青空で、空気は心地よい冷ややかさ。山登りにはまさに快適である。しかし、降り積もった落ち葉は大量で、ただでさえ狭い作業道を覆い隠した。何度も通い慣れた道なので予想はつくが、初めての人であればかなり危険であろう。慎重に歩を進める。

それは、黄葉したイヌブナの巨木を撮影している時のことだった。猛禽の鳴き声に耳を澄ます。声がだんだん近づいてくる。空を見上げる・・・いたっ! 落葉した木々の枝越しに、大きく旋回しながらこちらに向かってくるのは、日原の空の王「クマタカ」である。かっこいい。とにかくかっこいい。惚れ惚れするような飛翔を見せつけ、やがてクマタカは去っていった。

最後に「懸崖のツガ」に立ち寄ってみる。すると、まるでツガ自身が黄葉しているかのように、周りの木々が色づいている。(写真右) 見る角度によっては、ツガから後光が差しているかのようだ。ここだけは何故か黄葉の旬で、「懸崖のツガ」が一年で一番華やかに見える一瞬だったかもしれない。

いや〜久々の山は、サービス満点であった。他にもカモシカは出るわ、日本シカ出るわで山に大歓迎をしてもらえたような気分である。また行かねば!・・・とサボリ癖を棚に上げ、新たに悪びれもせず誓うのであった。

 
     


     
 
たまには他所を巡ってみる
2012/06/17

日原街道が、崩落のために大沢〜白妙橋間が通行止めになっている。こうなると日原での山行も当然お預け。なにより、不便をされている日原住民のためにも、一刻も早い車道の復旧を願っております。そのようなわけで、今回は奥武蔵の山々を知人の案内で巡ってみることにした。とはいえ、車での移動が中心の山旅ではあったのだが。

奥武蔵の高山不動尊といえば、幹周りが10mを超えるイチョウの巨樹であろう。この日は昨日からの雨が朝方には降り止み、境内はうっすらと霧に覆われていた。大イチョウも、眠りから醒めたような趣でしっとりとした姿で我々を迎えてくれた。(写真左)

八徳は展望の良い山里で、その里の絶妙な位置に形の良い一本のソメイヨシノがある。(写真中) この桜が咲いた時期のことを想うと、そのシチュエーションの良さに是非再訪したいものである。八徳には、たくさん桜を植えるというよりも、植える位置を考えて他の桜も配置してあるように感じられる。桜並木も悪くないが、このようにスポット的な桜の存在は、むしろこのような地形では印象深いように思う。

最後に訪れたある山里に、ヤマザクラの見事な巨木があった。ネットで調べてみても該当する記事はなく、おそらくほとんど世に知られていない存在なのだろう。樹冠が広く、枝の損傷もほとんど見られない健康優良樹である。この桜も、八徳の一本桜と共に、満開の時期にもう一度再訪してみたいものである。

 
     


     
 
ツガ、三体
2012/05/13

今回もO画伯と、そのお仲間Kさんとの三人での行動となった。日原に到着寸前まで行き先を考えていたが、集落から作業道を通って賀老谷へと行ってみることにした。ただ、この作業道には巨木が多い。巨樹の会会員のお二人が、とても素通りして賀老谷へと向かうとは思えなかった。

その予想通り、まずは美形の「一石山大権現のツガ(写真左)」で一行は時間を費やす。個人的には今まで何度も訪れているが、冬場の方が光が回りやすく撮影には向いているようだ。しかし、このツガの樹形はまるでマツのようだ。ツガは確かにマツ科ではあるが、その枝振りの美しさは本家と比べても全く引けを取らないだろう。

さらに作業道を登り上げると、道の外れに幹周が3.5mほどのツガがある。この巨木も樹形が素晴らしい。(写真中) もともとこの周辺にはツガの巨木が多く、この日だけでも3mを超えるものだけで9本も見ることになった。一本一本計測をしていくので、当然時間は掛かる。これは賀老谷へは行けないな・・・と割り切ることにした。

実際この作業道は、賀老谷手前で完全に道が崩落しており、先へ進むには困難だった。そこから引き返し、往路では通らなかった作業道に別の巨木を見に行くことにした。岩壁にそそり立つ「懸崖のツガ」(写真右) これを見たお二人は、さすがに驚きの声を上げた。育った環境の苛酷さにも負けず、4mを超える巨木に成長したこのツガは、そのど迫力の根張りで見る者を魅了する。ほとんど世に知られていないが、隠れた名木ということになるだろうか。

ちなみに、ミズナラ、イヌブナ、モミを加えて、今日観察した巨木は13本にものぼる。それも作業道のそばの巨木ばかりで、調べればまだまだ見つかるだろう。まさに巨木林と呼ぶにふさわしい森であった。

 
     


     
 
奥倉沢を歩いてみる
2012/04/30

今日は、吉祥寺在住のO画伯と一緒に山に入ることを以前から決めていた。さて、どこに行こうか・・・と思案した結果、新緑が美しいであろう奥倉沢にすることにした。この「奥倉沢」というのは私の造語で、単に倉沢林道の終点奥の森のことを総称して呼んでいる。当然他の誰かに尋ねても首を捻られるか、不審がられることになるのでご注意を。(笑)

魚留橋の袂から斜面を登り上げる。この途中に山桜の巨木があり、丁度満開を迎えていた。(写真左) 以前からこのタイミングを狙っていたのだが、今日この場所を選んだのもこの桜の存在があったからだ。一本の山桜の旬に遭遇することは、狙っていてもなかなか難しいものである。今日は、まさに幸運としか言い様がない。

さらに山道を登り、シオジ谷へと向かう途中にその巨樹がある。「シオジクボのカツラ」 カツラにしては巨大な主幹を残し、深い谷間に育ったせいか恐るべき長身を誇る。(写真中) 木の根元にリュックがあるのがお分かりだろうか。樹形も健康状態も申し分のない、日原でも有数のカツラであることは間違いない。

ところで、イワウチワと言えば青梅線沿線の山が有名だが、奥倉沢にも小規模ながら群落があった。それは、たまたま巨樹を探してとんでもなく急な尾根を登っていた時、白い花が至る所に咲いているのに気付いた。あれ、これはイワウチワだ・・・と、思わぬ出会いにニンマリ。巨樹の方は不発だったが、ここでの新たな楽しみが増えて大いに満足であった。

それにしても渓畔林の新緑は美しい。柔らかな色合いの緑が、波のように木立の中に漂っている。今日は一日中陽射しには恵まれなかったが、それは目に優しい癒しの森でもあった。林床ではエイザンスミレが咲き乱れ、ハナネコノメは大規模な群落の咲き始め。山桜には少し早いが、春爛漫の森を二人占めである。

最後に、棒杭尾根にブナとツガの巨木を見に行く。特にこのブナは幹周が4mを超え、日原でも1〜2を争うほどの大物なのである。折角なのでO画伯に幹周を計測してもらう。(写真右) 二年ほど前に計測した値とほとんど変わらない数値(4.14m)であった。ブナは丁度花の時期で、葉の色は新緑そのもの。改めて今日の幸運に感謝、感謝であった。

 
     


     
 
某新聞社さんと一緒に 2
2012/04/25

前回は雨で山登りは出来なかったが、今回は雨の谷間ながらなんとか天気は持ちそうである。予定通り、金岱山のミズナラへと向かうことにした。ただ私、睡眠不足に加えて体調もイマイチで、体はすこぶるオモイ。もし取材がなかったなら、きっと倉沢あたりで山桜の撮影をしていたに違いない。

観念して一石山神社の裏から登り始める。昨夜の雨で道はやや滑りやすい。相変わらずの悪路のところには、いつの間にかロープが申し訳程度に張られているが、登山経験の浅い人にとってはアリガタイ存在かもしれない。

体調の悪さを実感しながらも、なんとかタワ尾根筋に辿り着き、燕岩の頭に記者さんをお連れする。景色はやや霞んではいるが、展望の効くその場所にはやはり気持ちが晴れる何かがある。しばらく涼しい風に吹かれて、気分をリフレッシュする。

そしてなだらかな尾根筋を登り、金岱山のミズナラへと向かう。先客が一人いたがすぐに立ち去り、残された我々二人がこの巨樹のそばにいる間には、他に誰一人訪れる人もなかった。いつもこのミズナラを見ると想うのだが、人に例えるならかなり偏屈で口の悪いオヤジのようなイメージがある。いつもヘラズグチを叩いているような、例の口に似たコブのせいかもしれないが。(写真左)

その場所で昼食を摂った後、人形山の頂上まで行ってみることにした。森にはだんだんと霧が立ち込め、尾根の上の方の視界は無くなってきた。(写真中) 前回ここを訪れたのは昨年の10月であったが、その時には人形山からタワ尾根筋へと続くモノレール道があったのだが、今日はすっかり取り払われていた。上での作業が終了したということか。

霧は想ったほど深くはならず、個人的には少し残念だったが、「金岱山のオノオレカンバ」も今までとは違った雰囲気の写真を撮る事が出来た。(写真右) 芽吹き前の森は、まだどこか冬の面影を残しつつ、やがて来る新緑の季節を迎える喜びを秘めているようだ。日原の春は、まだ始まったばかりである。

 
     


     
 
某新聞さんと一緒に
2012/04/14

今日は以前から取材の依頼を受けていたのだが、いかんせん天気が悪い。昨日からまる一日雨だと分かっていたので取材は中止と思っていたのだが、いろいろお話を伺って林道沿いの巨樹などを見てみたい・・・とのこと。ご要望にお応えして、雨の日原に出かけることにした。

日原林道沿いにいくつかの巨樹があるが、まずは「日原川とガニ沢出会いのカツラ」にお連れする。雨は降り続いてはいるが、シトシトと降る小雨で傘があれば十分である。林道から渓流側に降りて、私自身も久しぶりにこのカツラに近寄った。(写真左) 雨のせいで、身に纏った苔がとても美しい。そして、こんなに大きかったんだと改めて感心してしまった。

このカツラは雌の木であるが、すぐそばに雄のカツラの木がある。まだ開花とまではいかないが、枝先を赤く染めてあと数日もすれば満開となるだろう。(写真中) 花の命は短いが、中でもカツラは特に短い。その満開の姿を見られるのは、まさに幸運というしかないだろう。狙って撮影するにも無理があり、行き当たりばったりで探した方が余程可能性もあるかもしれない。

その後、車で日原林道を遡ろうとしたのだが、天祖山の登山口先のゲートが南京錠付きで閉鎖されている。どうやら工事のために、これより先は車の進入を許してくれないようだ。

さて、日原林道が通行できるようであれば、「名栗沢のトチノキ」や「鍛冶小屋窪のトチノキ」にご案内しようと思っていたのだが、これでは予定を変更せざろう得ない。そこで一旦八丁橋まで戻り、そこから歩いて孫惣谷林道沿いにある「オロセ尾根のミズナラ」を訪れることにした。

孫惣谷林道の曲がりくねった道を、傘をさして新聞記者さんとトボトボと歩く。見晴らしの良いところで日原川を挟んだ対岸の八丁山を見ると、霧が生き物のように山肌を這っていく。(写真右) さらに登り上げると、カーブミラーの奥にそのミズナラは姿を現した。久しぶりに訪れたが、霧の中に佇むその姿はかつてより貫禄が増したように感じられる。足場の悪い斜面を傘をさして下る。ちょっと記者さんには怖い体験だったようだ。

 
     


     
 
孫惣谷のとある尾根
2012/02/28

随分と足が遠のいていた孫惣谷に、なぜか無性に行ってみたくなった。最後に訪れたのは何年前か、思い出せないほどに歳月が過ぎてしまっている。しかし、崩落などの大きな変化が起きない限り、かつては毎週のように通ったエリアの地形は、今もしっかり頭に入っている。とりあえず、「あの尾根」に向かうことにした。

日原林道から孫惣谷林道へ入り、目的の登山口までの道にはほとんど雪は消えていた。しかし、林道にはこの時期特有の落石も多く、ここにも春が近いことを実感する。林道を歩きながら、かつて訪れた巨樹・巨木が孫惣谷を挟んで対岸に見え、懐かしさに思わず頬も緩んでくる。そしていよいよ、目的の尾根にアプローチする登り口に着いた。

人工林が続くその作業道は、雪こそ少ないが凍っている箇所が多く、斜面が急だとかなり登りにくい。かと言ってアイゼンをつけるほどでもない。下りはここを通らない予定なので、ガマンして少しづつ高度を上げる。やがて見慣れた尾根の巻き道に出ると、そこを左に折れ、さらに先の尾根に出る。

そこは尾根の中にあって平坦な地形をしており、休憩をするにはもってこいである。対岸の天祖山の山容もよく見え、クリやブナの巨木や、まるでトカゲが身を起こしたような格好の木も見られる。(写真左) 早速ここで昼食にすることにした。

そして、今日のメインはこの尾根下りである。斜面にそこそこ雪は残るが、どこを歩けば良いかは分かっている。クリの多い場所を抜けると、モミ、イロハモミジの巨木、さらに「鹿寄せのカツラ」という巨樹が出現する。そして、最も逢いたかった巨樹「オリツキクボの大ツガ」と対面する。(写真中) 赤味を帯びたその巨躯は、以前と変わりなく急斜面に君臨して、他の木々の追随を許さない。大きな損傷も見られず、一安心である。

この尾根の最後を飾るのは、「昇龍のシナノキ」 斜面から水平に伸びたその幹は、大きな弧を描いて天に向かっている。まだ、このホームページの巨樹のリストにはアップしていないが、「鹿寄せのカツラ」とともに近日公開の予定デス。 所々に岩場もあるこの尾根には、木々の健気な努力の形が見られたりする。(写真右)これを美しいと思うのは、人間の驕りであろうか・・・。

 
     


     
 
ナラテエ〜ロ
2012/01/30

例年にない寒さで幾分怯んでいたのだが、ようやく今年最初の山登りをすることにした。日原集落に到着すると、森林館の温度計はマイナス3℃を指している。これから目指すナラテイロは、集落よりも600m以上も高い所にあるのだが、寒さに凍えることになりはしないかと少しビビリながらの出発であった。

日原林道は重機が雪かきをしているようで、目的地の登り口までは凍結した箇所を除けばかなり歩きやすい道だった。しかし、さすがに登り口から先の雪には人の足跡は無い。この地点で積雪は15cmといったところだろうか。ここから上は、果たしてどんな世界が待っているのだろうか。

スギやヒノキの人工林の道は、さすがに雪は浅いが、日陰の急坂などは足場を登山靴で刻みながら歩かないと滑りやすい。いつもより時間と力を掛けてナラテイロへ続く最後の尾根へと辿りついた。ここまで来ると積雪は30cmを超える。今までなんとか見極めてきた道も、もはや全く判別がつかななくなってしまったが、後は道が無くても尾根を登り上げるだけである。

ナラテイロの頂上近くにある「弁慶のクリ」 枯死してなおも数十年も立ち続けている、まさに立ち往生の巨樹も根元はすっかり雪に覆われている。(写真左)近付こうとすると積雪はかなり深く、膝上まで沈み込む場所もある。気温も恐らくマイナス5℃を下回っているだろう。風がないのがせめてもの救いである。

雪のナラテイロは、シカの足跡だけが残る静かな静かな森であった。(写真中)午後になると陽が陰る時間も多くなり、ジッとしていると寒さが身に沁みる。しかし、潔く葉を落とし裸木になって身を晒す木々と、林床を覆い尽くした雪の対比は、森の気高さが感じられるようで厳かな気持ちにさせられる。

倒木に座って昼食にありついた頃、森は光を取り戻し始めた。空には青空も覗き、ミズナラの巨樹の枝の背景として不思議な世界へと導かれるようだ。(写真右) 雪の森を十分満喫して、午後三時過ぎに下山を開始する。登りでやや苦戦した道は、下りでは全く問題なく、むしろ膝や足首への負担が軽減されているかのような快適な道であった。

 
     


     
 
ブナ三様
2011/11/27

あれよあれよという間に紅葉の季節を見逃し、一枚の写真を撮る事も無く秋は過ぎ去ってしまった。そし今や初冬、今日の朝は寒かった〜・・・。今回は隠密行動となりますので、行き先はヒミツです。どうかお許しあれ。

とある尾根を、ナマッた体を引きずりながら登っていくと、まだ僅かばかりのカエデ類が木々の間に燃え残っている。ただ、カメラを向けるほどのものではなく、もはや秋の忘れ物のような風情でなぜか物悲しい。それでも朝方は冷え込んだ気温は、尾根筋に登り上げた頃には心地良く、冬枯れの森を撮影していてもほとんど寒さを感じずにいられた。

樹形の良いブナが多く見られるこの尾根は、私のお気に入りの撮影地で、本来であれば紅葉の真っ盛りにやって来るはずであった。しかし、今年は本当に山との巡り合わせが悪かった。紅葉の時期も、休みに日には通院を余儀なくされたり、雨に祟られたりと天候にも見放された感がある。落ち葉の降り積もった森を歩きながら、久々の山をキョロキョロしながら進んでいく。

それほど大きくはないが、「これぞブナ!」と呼べる美しい樹形の木がある。(写真左) 何度も見ているが、色白で女性的なフォルムがなんともいえない。そして、何と言ってもこの尾根の至宝は「風神のブナ」である。(写真中) 他のブナよりもやや紅葉の遅いこのブナは、その分まだ枯葉を多く枝に付けていた。見る限りでは新たに目立つ損傷は無く、いつもながらのカッコイイお姿であった。

尾根をさらに登って行くと、黒い猟犬が鈴を鳴らしながら下って来た。犬は私をチラッと見て、そのまま通り過ぎてしまったが、その後しばらくしてから害獣駆除のハンターの方が二名降りて来た。今日はシカには出逢わなかったそうで、上にニホンザルがいたことを教えたもらった。

さすがにこの時期になると、日暮れは早い。後一時間もしない内に太陽は山陰に隠れてしまいそうである。しかし、この時間は冬枯れの木々がほんのり赤く染まる美しい瞬間でもある。カメラマンとしては、下山と撮影の狭間で悩むことになる。お気に入りのブナの樹皮が、赤味を帯びて私を誘う・・。(写真右) ダメだ。リュックを降ろし、撮影に取り掛かる。

こんなことを続けていたら、あっという間に陽は山陰に沈み、森は一気に青味を帯びた世界に移り変わる。一刻も早く下山をしなければならない時間帯である。森で調達したクリの杖を利用して、ダブルストックならぬ、ダブルステッキで一気に下る。お陰で今まで作ったことも無い血豆が、左足の親指に出来たしまった。ブナの赤い誘惑に乗せられて、どうやら無事では済まなかったようである。

 
     


     
 
今日はガイドです。
2011/10/01

一週間前あたりから、天気予報では10月1日(土)は雨となっていた。それもこの日だけ。よりによってガイドの依頼が入っている日に降らなくても・・・と想いながら一週間をヤキモキしながら過ごしたが、直前になってなんとか天候は持ち直してくれた。気温も山登りには最適で、背中の荷物もいつものカメラ機材がないだけに足取りも軽い。が、ガイドとしての責任は果てしなく重い。

と言うのも今回のガイドは、金岱山のミズナラをメインにタワ尾根の巨樹をご紹介するもので、私を含めて10人での行動となる。震災以来、籠岩下からの登山口が使用できないために、現在は一石山神社裏手のルートからタワ尾根に登り上げるしかない。しかし、奥多摩の山に慣れた方には問題ないが、このルートは登り始めとタワ尾根への登り上げる直前が厄介である。参加者のみなさんには、事前に悪路であることはお伝えしていたのだが、それは想像を超えるものであったようだ。

それでもなんとか尾根へと登り上げ、360度展望の燕岩へと向かった。天候こそ曇りではあったが、遠くの山並みも見渡せて、みなさんにも喜んでいただけたようだ。しばらく景色を堪能して、踵を返して金岱山のミズナラへと向かう。悪路を歩いたみなさんには、その後の尾根筋の道はなんとも優しい緑の道だったかもしれない。

金岱山のミズナラは、前回の下見の時と変わらずに誰も訪れない森でひっそりと佇んでいた。我々はミズナラのそばで昼食を摂り、贅沢な空間を独占することになった。(写真左) それから金岱山のオオヤマザクラ、金岱山のオノオレカンバ(写真中)を訪ね、来た道を引き返すことになる。

そして、タワ尾根筋から一石山神社へと下る岐路へ辿りつく。行きで苦戦された方ほど、下りへの不安は大きかったのではないだろうか。私も先頭で歩きながら、邪魔な石や落ち枝をなるべく排除しながら危険を回避すべく気を配る。みなさんも意を決し悪路を下り始めた。(写真右)

途中で尻餅を付かれた方もいたが、それでも予定通りの時間に神社に到着して、今日の山行の無事をみなさんは神社に報告して感謝しておられた。本来であれば籠岩下からの登山ルートでご案内したかったが、現在の状況では今日のルートしかない。参加者のみなさんは大変だったかもしれないが、ほとんど人のいない週末のタワ尾根を満喫できたのは、あの悪路を登り上げたからと思っていただけるとガイドとしては救われマス。

 
     


 
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