東京最後の聖域「にっぱら」
 巨樹・巨木
 
唐松谷のハリギリ 
幹周  3.65m      樹高  20m       標高  1250m 
 
 
 ハリギリは、日本全国に幅広く分布する落葉広葉樹で、特に北海道に多く生育する樹種のようだ。アイヌ語では、トゲの多くある木という意味のアユシニと呼ばれるように、若い幹や枝には鋭いトゲが見られる。純林や優占種となることはほとんど無く、それだけに森の中では独特の異彩を放ち、樹種の特定もしやすい木であろう。ヤツデに似た葉の形、縦に深く裂ける樹皮の荒さなど、特にハリギリの個性は際立っているように思う。

 このオリツキクボのハリギリは、現在日原で確認されている中では一番の大きさとなる。全国的に見れば6~7m以上の大物もあり、それらに比べるとやや小粒感も否めないが、やはりその存在感は森の中で光っている。このハリギリの特徴は、何と言ってもその樹皮にある。長い歳月を掛けた成長の証しでもあるその模様は、何か人の意図を持つ抽象画を想わせる。じっと見つめていると、不思議な世界に導かれていくような感覚になる。

 ハリギリの名の如く、木肌の白さ,木目の美しさ,材面の光沢などは本家の「キリ」と似ており、箪笥の材としても重用される。直径が1mを超えるような良質な大径材は、特に高級材料として用いられるそうだ。比較的、真っ直ぐな幹に成長しやすいハリギリだが、日原の金岱山のハリギリ唐松谷のハリギリなどは、太く真っ直ぐな幹を持ち、その良材としての資質もあるだろう。

 しかし、このオリツキクボのハリギリはクネクネとした幹を持ち、材としての資質は落第かもしれない。ただ、それは人が決めた価値であり、森の中で生きる野性の巨木としては何のメリットもない。むしろ、ただでさえ目立つハリギリの中で、さらに曲がった幹を持つこの木の存在感は、飛び抜けて大きなものとして私の目には映る。大勢の人の中で、孤高の天才が自ずと頭角を現す姿に似ているのかもしれない。

         2013年2月20日 一葉
 
 撮影日

 上  2004年 12月19日

 下  2010年 12月19日


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