東京最後の聖域「にっぱら」
 巨樹・巨木
 
ハナノキ尾根のケヤキ 
 
幹周  4.30m(’11.3.27計測)      樹高  25m       標高  1250m 
 
 
 人は怪我をして外傷を負うことがあっても、自らの体はそれを治そうとする力を持っている。同じように木も枝が折れたり、幹に傷を負うことがあっても、その傷口を塞ごうとする力を備えている。そして、この治った傷痕のことを「癒合した」という言い方をする。人と同じように、木も若木の方がその回復力は旺盛で、多少のダメージならほとんど癒合して生き延びるのではないだろうか。

 このケヤキの巨木は、かつては二又の大枝を持つ樹形であったに違いない。いつの頃か一方の大枝を失い、その際には深い痛手を負ったことだろう。しかし今はその傷痕も塞がれ、洞が覗く大きな穴が目立つだけである。それは傷の痛々しさというよりは、むしろユーモラスなイメージを醸し出す個性になっているようだ。見方によっては、何かを大声で叫ぶアニメの木のキャラクターのようだ。

 この木の根元には大きな木が横たわっているが、これは折れてしまった大枝ではなく、おそらくミズメが倒伏したものだろう。折れた枝を斜面に探したが、それらしきものは見つからなかった。それはこの木が大枝を失ってから、随分と年月が経過したことを物語っている。癒合した傷痕も分厚い樹皮で覆われ、二又であったことはもう遠い記憶になっているのかもしれない。

 犬麦谷のケヤキ小川谷上のケヤキと同様に、このケヤキも二又から一本に幹に樹形を変えている。もともと4mを超える巨木となれば極端に少ない山のケヤキの中で、このように生き残った巨木たちが同じ樹形をしていることが興味深い。全てのケヤキがそうだとは言えないが、森で生き残る手段としてケヤキは二又で成長し、ある程度の大きさになるとバランスの悪い方を切り離すこともあるのではないかと思っている。キツイ斜面で生きる山の巨樹や巨木は、少なからずそのようなサバイバル術を持っていても不思議ではないだろう。

                          2011年4月06日 一葉
 
 撮影日

 上  2011年  3月27日

 下  2011年  3月27日


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