東京最後の聖域「にっぱら」 |
巨樹・巨木 |
犬麦谷のケヤキ |
幹周 5.05m 樹高 30m 標高 1000m |
ケヤキは街路樹や公園でもよく見られ、人の目に触れることの多い木である。周りに障害物がなければ、美しい放射状の弧を描くような樹形になり、冬枯れの木々の中にあっても一目でケヤキとわかるほどだ。秋の紅葉も美しく、木によって黄色やオレンジ、紅と彩りを見せる都会の季節感を演出する数少ない存在と言えるだろう。 「犬麦谷のケヤキ」もその名の通りケヤキではあるが、周りは障害物だらけの森の中にある。こうなると均整のとれた樹形に育つことはなく、光を求め生存競争を勝ち抜いてきた合理的な姿がそこにある。左の写真で見ると、地上10mほどの光の当たらない部分には枝さえなく、効率の悪い光合成を排除している。急斜面にありながら、周りの木々より遙に梢は高く、その巨体を維持するために根の張り方も太く逞しい。 しかしこのケヤキは、最初からこの樹形であったわけではない。恐らく数十年ほど前までは、地上3mほどのところから別れた二股の樹形をしていたようである。その一方の大枝は斜面の下に横たわっているが、もしそれが折れずに残っていたとしたら、折れた勢いで幹が大きく裂けることもなく、幹周りは6mを超える巨樹であったのではないだろうか。 巨樹は、時として悲しい選択をする。その体が大きくなるに従い、生きていく上で負担になる部分を切り捨ててゆくのだ。この折れた大枝も、ケヤキの成長に随分と貢献したに違いない。しかし、この枝の存在が全体のバランスを崩し始めると、無常にもバッサリと伐って落としたのである。森の中で生きることは、巨樹にしてもギリギリのサバイバルなのであろう。横たわる大枝は、あたかも王を守るために犠牲となった戦士のようでもあった。 |
撮影日 上 2004年 9月12日 下 2004年 9月12日 日原の巨樹・巨木 樹種別巨樹・巨木 ケヤキの巨樹 Home |
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