東京最後の聖域「にっぱら」
 巨樹・巨木
 
小川谷上のケヤキ
 
幹周  4.15m(’10.9.10計測)      樹高  36m       標高  955m 
 
 
 現在、日本一大きなケヤキは山形県東根市の「東根の大ケヤキ」で、その幹周りは15.6mにもなる。東京都もそれには及ばないが、ケヤキの巨樹は数多く、かつては10mを超えるものもあったようである。しかし、そのほとんどのケヤキは人により植樹された木であり、中には寄せ植えが大きくなったケースも少なくない。このように全国的に見ても、ケヤキの巨樹は数あれど、山中でケヤキの巨樹が発見されたという情報はほとんど聞いたことがない。

 では、何故ケヤキは山中で大きくなり難いのであろうか。私はその原因の一つに、この木の持つ特徴が関係しているのではないかと思っている。ケヤキの材は非常に重い。同じ建築材に使われるスギやヒノキに比べると、その比重には大きな差がある。つまり、ケヤキは大きくなればなるほど横に伸びる大枝が、幹に掛ける負担を増大させていくことになる。まして山中では、他の木との光を求めた競争の中で効率の悪い枝は淘汰される運命にあり、ケヤキの枝の重さがそれに拍車を掛けているのではないだろうか。

 写真の「小川谷上のケヤキ」と「犬麦谷のケヤキ」は、日原を代表するようなケヤキの巨樹だが、両者とも似たような樹形をしている。本来であれば、同じくらいの太さの二股のケヤキであったはずだが、そのうちの一本は幹を裂くようにして近くの斜面に倒伏し、今では苔むした朽木となっている。この二本の巨樹を見ていると、私にはケヤキがどちらか一方の枝を残すために、もう一方を切り離したのではないかと想えるのだ。それは、ある程度の大きさになった時にバランスの良い方を残し、枝の重さの負担から逃れて生き延びようとした結果ではないのだろうか。

 人の手が掛かって大きくなったケヤキには、周りに競争相手も少なく、支柱などの強い味方も現れる。場合によっては大枝をワイヤーで支えることも珍しくはない。山の中のように「二股の選択」をする必要もないのだ。このように人に守られながら育った木と、山中で生命力だけを頼りに育った木とでは、おのずと成長のスピードにも差が出て当然であろう。「小川谷上のケヤキ」は幹周こそ4m強の太さでしかないが、森という厳しい秩序の中では堂々たる巨樹の一つである。

                          2010年9月25日 一葉

 
 撮影日

 上  2010年  9月10日

 下  2010年  9月10日


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