東京最後の聖域「にっぱら」
 巨樹・巨木
 
ウトウクボのカツラ 
幹周  5.23m      樹高  35m       標高  1250m 
 
 
 孫生(ひこばえ)という言葉がある。植物の株もと付近から生える新芽のことで、稲刈り痕に伸びてくる稲穂や、木の切り株やその根から再生する新芽のことをいうが、木の種類によってはその孫生が集まって巨樹へと成長するものがある。カツラやイヌブナはその代表であろう。

 しかしカツラやイヌブナも、最初から孫生の集合で成長するわけではない。若木の頃は普通の木と同様、スーッと伸びた主幹を持つありふれた樹形をしている。そして、ある程度主幹が成長した頃から孫生は目立ち始め、主幹の樹勢が衰えて枯れてくる頃になると、周りは立派な「木」に育った孫生がその主幹を守るような姿をした巨樹へと変貌する。

 ただ、どの世界にも例外というものがあるように、この「ウトウクボのカツラ」はカツラとしては変り種である。それは、主幹が5.23mに成長しているにも関わらず、全く衰えを見せないのだ。日原にもたくさんのカツラの巨樹はあるが、主幹がこれほど大きいものは「鳥居谷のカツラ」「スミクボのカツラ」の2本くらいのもので、木の健康度からいうと「ウトウクボのカツラ」が一番だろう。

 このカツラも根元にか細い孫生を蓄えているが、もしこれがなければカツラの樹形には見えない。光を求めて育った名残りであろうか。その巨体を大きく南側に傾けて、地上10m付近から一気に真上に枝を突き上げている。この逞しいカツラの主幹は、当分孫生の世話になるつもりはないらしい。「俺は元気一杯だ。まだまだ若い者には任せられない!」とでも思っているのではないだろうか。
 
 撮影日

 上  2003年  4月29日

 下  2002年  5月14日


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