東京最後の聖域「にっぱら」
 巨樹・巨木
 
オリツキクボのブナ 
 
幹周  3.60m      樹高  26m       標高  1100m 
 
 
 日原山地において、ブナは日当たりに恵まれた場所ではなく、むしろ日照時間に恵まれない場所の方に多く見られる。それは恐らく、ブナにとっては生きやすい適温があり、東京の緯度であればある程度の標高と、夏の暑さから身を守る環境が必要なのであろう。日原有数のブナ林である唐松谷や孫惣谷右岸の森は、どちらもその条件を満たしている。日原のブナは日陰が好きなのでなく、日当たりを犠牲にしても生き残る環境を選んでいるような気がする。

 オリツキクボのある孫惣谷は、水松山から日原川にかけて北東に流れ落ちる谷で、タワ尾根とハタゴヤ尾根に挟まれた日照時間には恵まれない山域である。特に右岸側は日当たりが悪く、春先の雪解けもかなり遅くなる。つまり、日原のブナにとって生きるにはもってこいの場所になるのだ。ただし、このブナは同じ孫惣谷でも左岸側にあるのだが、やはりそこもあまり日照時間に恵まれているとは言い難い。

 そんな環境に育ったこのブナは、孫惣谷林道からも確認できるほどの長身で、他の木々よりも頭一つ飛び抜けている。それは、少ない日照時間をできるだけ有効に使うために、まるで大きな電信柱を想わせるような幹を真っ直ぐに伸ばして、出来る限り制空権を得ようとした証しであろう。日原有数のブナ林は、概ねこの樹形のブナが揃っているようだ。

 日当たりに恵まれた尾根のブナは、同時に強風に晒される宿命を持っている。そんな風神のブナ両替場のブナの樹形は、地面から最初の横枝までの幹の間隔が非常に短い。反面、このオリツキクボのブナのように、日当たりに恵まれていないながらも谷間にあることで、強風の影響を受けることも無く成長できるメリットもある。ブナに限らず、樹木は芽吹いた場所で生き抜くための手段を、いくつも持っているのであろう。

                2012年3月12日 一葉
 
 撮影日

 上  2002年 11月05日

 下  2012年  2月28日


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