東京最後の聖域「にっぱら」
 巨樹・巨木
 
Y型のシナノキ 
幹周  4.20m      樹高  15m       標高  1100m 
 
 
 同じ大きさの巨樹でも、その樹種によって見つけた時の喜びは大きく違う。幹周りが3mを超える巨樹でも、ミズナラであれば感動は薄く、メグスリノキであれば大興奮となる。それはその木の特性で、巨樹になりやすいものとそうでないものとの差である。つまり、3mを超える巨樹でもその希少性で発見のテンションは大きく変わるのだ。

 この巨樹を登山道の斜面下に見つけた時、その樹皮の様子からシオジに思えた。ある程度離れた場所からでも大きく見える木は、木に近付けは近付くほどその大きさは存在感を増すものである。4mを越える木であることは間違いなく、シオジとしてはなかなかの巨樹である。しかし、木の下まで来て上を見上げると最初の見立てとは違うことが分かった。

 シオジの葉は奇数羽状複葉という形状であるはずが、この木の葉は互性し葉身は心円形(ハート形)なのである。「あれっ、これはシナノキだ!」と気付いたと同時に気持ちは高ぶった。日原においてシナノキの巨樹は少なく、中でも単木で4mを超えるものは僅か2本しか見つかっていない。なんとこの巨樹は、ウトウクボのシナノキに次ぐ日原でも2番目に大きいシナノキだったのである。

 ところで、この木に「Y型のシナノキ」と名付けたのは現在の樹形にある。下の写真の角度から見るとまさにY型なのである。これはこの木が望んだ形ではなく、主幹を失い残された大枝もその大半を失った故の悲劇の形と言えるかもしれない。失われた主幹は下の斜面に横たわってはいるが、折れてまだ長い歳月を経た変遷を感じない。見上げればボッカリと空いた樹冠の名残りが青空を覗かせていた。

         2015年6月06日 一葉
 
 撮影日

 上  2015年  5月30日

 下  2015年  5月30日


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