東京最後の聖域「にっぱら」
 巨樹・巨木
 
ウトウクボのシナノキ 
 
幹周  4.74m      樹高  25m       標高  1050m 
 
 
 ウトウクボが孫惣谷と出会う、その手前の右岸にひと際目立つ巨樹がある。急斜面もなんのその、巨体はカーブを描きながら迫り上がり、大きく枝葉を拡げている。斜面の下から見ると、それほど大きな木だとは思えないのだが、真横から見ればかなりの風格を持った佇まいをしている。

 シナノキの葉は、ハート型をしている。カツラなどの葉もハート型といえるが、それよりもっと端正な型で美しい。また、花の時期には上品な甘い香りを漂わせることもあり、ちょっと気取った言い方をすれば女性好みの「ロマンチックな木」とも言えなくもない。。

 そういえば、この巨樹の根元にかつてシカの骨が散乱していたことがある。そこで息絶えたのかもしれないが、最後の地にここを選んだとすれば、きっとその鹿にとってもこのシナノキは特別な場所であったのだろう。また、鹿自身もこだわりのロマンチストだったかもしれない。

 この近くには、「挺身のカツラ」やブナの巨木もあり豊かな森ではあるのだが、残念なことに孫惣谷を挟んだ対岸の山は、石灰岩を採掘する鉱山という対極の地であり、見るも無残に削られた山をいやでも目にする。「立岩」という、鍾乳洞と対をなした修験道の象徴の巨岩も今はなく、その長きに渡る人々の盛衰を、この巨樹はじっと見ていたのかもしれない。
 
 撮影日

 上  2003年  5月06日

 下  2003年  5月06日


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