東京最後の聖域「にっぱら」
 巨樹・巨木
 
挺身のカツラ 
幹周  未測定      樹高  35m       標高  1150m 
 
 
 山の中を歩いていると、時々落石に遭遇することがある。それは拳大の大きさもあれば、人の頭以上の大きさのものが落ちてくる場合もあり、それらしき音を耳にしたら咄嗟に動き出せる用意が必要となる。まれに遠くで崩落の音を耳にすることもあるが、その凄まじい音量からすると、かなりの大きさの岩をも含んだ落石であることは想像に難くない。山は季節による変化だけではなく、少しずつその姿そのものを変えているのかもしれない。

 ところでその落石だが、ただ単に上から下へと落ちて行くわけではない。山には当然木々が生い茂り、落石の下にある一歩も動くことができないもの達は、その直撃を受ける可能性を持っている。私も今まで随分と、落石の直撃を受けた樹木の生々しい傷や、その傷を修復した跡を目にしている。そして、急斜面にある巨樹のほとんどは、その大きさ故に落石の標的となっている場合が多いようだ。

 左の写真をご覧頂きたい。このカツラの脇にある大岩は、カツラが芽を出す前からあったものか、あるいは上から落ちてこのカツラに受け止められたものと思われるだろうか。答えは後者の方になる。この場所にいると分かりやすいのだが、もしこのカツラがここに無いものと考えると、大岩の置かれている状況が不安定過ぎるのだ。今にも転がり落ちてしまいそうなのである。そして、谷筋にありながらも岩に着く苔の量はあまりにも少ない。もしこれがカツラ以前からあるものだとすれば、すっかりと苔で覆われていてもよさそうである。

 「挺身のカツラ」とは、まさに身を挺して大岩を受け止めた、このカツラに敬意を表して付けた名前である。これほどの大岩の落石であれば、木のダメージも相当なものであっただろう。しかし、現在はこうして樹勢には全く影響も無く、見事な巨樹としてウトウクボ右岸の斜面に空高く梢を伸ばしている。ただ、残念ながら幹周りの測定は出来ない。なぜなら、地上高2mを越える大岩は、カツラにしっかりと密着していて測定するメジャーの侵入を許そうとしない。もはやカツラの一部にでもなったつもりなのだろうか。

                              2010年6月23日 一葉
 
 撮影日

 上  2003年  5月06日

 下  2002年  5月06日


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