東京最後の聖域「にっぱら」 |
巨樹・巨木 |
昇龍のシナノキ |
幹周 3.43m 樹高 20m 標高 1000m |
木々の成長は、同じ環境にあれば必ずしも同じ樹形になるというものではないらしい。下の写真を見ていただきたいが、同じ斜面にありながらこのシナノキの樹形は、他の木々と比べてあまりにも違いすぎている。それは異形とも呼べる姿で、この木の成長の過程でいったい何があったのか、私はそんなことを想像するだけでも楽しくなってしまう。金岱山のミズナラのように、日原でも斜めに伸びた巨樹はあるにはあるが、ここまで見事に曲がった幹を私は見たことが無い。。 それにしても不思議な樹形になったものである。ほぼ水平に伸びた根元から、美しい曲線を描いて伸び上がるその姿は、あたかも龍が身をしならせて天へと昇る様を想わせる。「昇龍」とは、まさにこの見た目から付けた名前で、個人的にもその命名に満足している。2001年に見つけた巨木ではあるが、10年以上経った今でもその名に恥じない樹形を保持している。 このシナノキは、恐らく種子の時に何らかの障害物が真上にあったに違いない。それは石かもしれないし、倒木であったかもしれないが、シナノキの芽が光を求めるには、水平方向にしか選択の余地はなかったのだろう。そして、苦労をしながらも地道に成長を続け、いつしか真上にあった障害物を押しのけるほどの大きさになった。しかし、遅すぎた・・・。もはや回りの木々のような直線的な幹は望むべくもなく、その大きく曲がった幹を持つ樹形を生涯決定付けられていた・・・。 私にはこんな物語が想い浮ぶ。一見ユニークに見えるその樹形も、この木にとっては必死に成長した証しに違いない。しかし、同じ斜面にありながらも、順調に種子から成長した木々よりも遥かに大きく、そして長く生き抜いていることに感慨を覚えるのは、けして私だけではあるまい。人と同じように生命力としてのタフさは、生まれ育った環境によって育まれるものかもしれない。 2012年3月18日 一葉 |
撮影日 上 2012年 2月28日 下 2012年 2月28日 日原の巨樹・巨木 樹種別巨樹・巨木 その他の巨樹 Home |
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