東京最後の聖域「にっぱら」
 巨樹・巨木
 
ヤケゴヤ尾根の五本グリ 
 
幹周  11.62m      樹高  20m       標高  900m 
 
(注)主幹 3,33m    株立ち数 5     根回り 7,90m 
 
 かつて、クリの巨木は伐採の対象であった。クリの材は水に強く、他の材よりもはるかに腐食しにくい。そのために以前は全国で、線路の枕木として重用された経緯がある。 それは、この日原の山でも例外ではない。私は山の中で、随分とクリの巨木の切り株を見てきた。クリは、切り株になっても腐食が遅いために、木工のオブジェのようにその姿を晒すのだ。黒く残されたその墓標は、クリにとっつての受難の歴史でもある。

 ところで、日原の森には唯一、と言っても過言ではない「クリの森」がある。「流れグリ」、「境グリ」、「翁グリ」などの巨樹を中心に、3m以上のクリだけでも10本以上はあるだろうか。そして、この貴重な森の頂点に君臨するのは、この「五本グリ」をおいて他にない。

 この木を最初に遠くから見つけた時、スズタケでその根元の視界が遮られて、とてつもなく大きな木があると胸を時めかせた記憶がある。近づいてみると、残念ながら一本の大きな幹ではなく「株立ち」の巨樹であったのだが、その木の持つスケールはけして期待を裏切らなかった。地表近くから五本に分かれたその枝は、3mを超える主枝を筆頭にそれぞれが成熟した立派なクリの木であり、このクリだけで一つの森を形成しているかのようである。

 一般にクリと言えば秋の味覚の果実を思い浮かべるが、お店の店頭で売られるクリは品種改良を重ねて大ぶりで食べ応えがある。しかし、野生のクリの木は原種のために、その果実の大きさを初めて目にすると、むしろ可愛いという表現したくなるほどに小さい。この五本グリも秋にはちゃんと実を付けるが、その実も例外なく巨体に似合わず驚くほどに小さい。巨樹と果実の大きさは、比例しないことが可笑しくもあり不思議でもある。

 
 撮影日

 上  2002年  7月09日

 下  2002年 10月15日


   日原の巨樹・巨木

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   クリの巨樹

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