東京最後の聖域「にっぱら」
 巨樹・巨木
 
ヤケゴヤの翁グリ 
 
幹周  5.09m      樹高  25m       標高  1220m 
 
 
 5mを超える巨樹といえど、ここまで痛みが進むとさすがに残念な気持ちになってしまう。最盛時には、現在よりもさらに幹周りは大きかったであろうこのクリも、今や一本の枝(主幹ではあるが)が残るのみの姿になっている。クリは腐食に強いため、枯れた部分でもまだこうして巨樹の体をなしているが、洞の内部の様子や外側の痛みからすると、この姿でいられるのも時間の問題かもしれない。

 しかし、日原で5mを超える単木のクリの木は、これだけしか見つかってないのも事実である。外見がよく似ているミズナラであれば、5mを超えるものも数多くあるが、腐食に強いクリの方が不思議と巨樹になり難いようだ。事実4mを越えるクリであっても、健全な状態のものはほとんど思い当たらないほどで、むしろ「翁グリ」はこの山域で、よくぞここまで大きくなったと賞賛するべきかもしれない。
 
 このクリの近くには、他にも多くの巨樹を目にすることができる。ミズナラ、カツラ、イタヤカエデ、アサダ、イヌブナなど数百年の生命の拠り所となっているようだ。恐らく、ほとんど人の手が入っていない場所であればこそ、「翁グリ」の長寿も可能であったかもしれない。人知れず芽生えたクリの木が、日原一のクリの巨樹となり、その終焉を迎えるにはこれほどふさわしい場所はないだろう。

 これは個人的な事ではあるが、私はこの翁グリを撮影後の下山途中に大怪我をしてしまった。単純な判断ミスによるもので、森を抜けて林道に出る寸前の出来事だった。両足骨折という歩行困難な状態にありながら、林道が目の前にあったのが幸いした。奥多摩工業の車に助けを求め、その日のうちに救急車で運ばれ二か月の入院となってしまったが、怪我をした場所が悪ければ翁グリの寿命どころか自分の命の心配をするところだった。

 
 撮影日

 上  2001年  3月27日

 下  2001年  3月27日


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