東京最後の聖域「にっぱら」
 巨樹・巨木
 
金岱山のイタヤカエデ 
 
幹周  3.22m (2010.1.16計測)      樹高  23m       標高  1250m 
 
 
 巨樹・巨木と苔類は、共生関係にあるようなものだろう。同じ場所に何百年、あるいは何千年も居座り生命を維持する木は、着生植物だらけと言っても過言ではあるまい。他の木々の種が風や鳥などによって運ばれ、幹から伸びた枝の付け根などに着床して成長したり、雨が伝い落ちる幹や枝には、苔類や地衣類などでいっぱいである。中でも苔に覆われた巨樹は、それがあるとないでは存在感に大きな違いがある。

 苔類が多く付く巨樹は、湿度の高い谷や窪に多く見られる。日原の巨樹でも、「スミクボのケヤキ」「日原川とガニ沢出会いのカツラ」などはその典型といえるだろう。風通りが良く、湿度が篭らない尾根の巨樹は、苔よりも地衣類と呼ばれる菌がその樹皮に独特の模様を作ったりする。ブナの樹皮によく見らる斑紋などは、その地衣類の着生による仕業ということになる。

 この金岱山のイタヤカエデは、斜面の谷川を表で山側を裏とすれば、表は地衣類による模様が目立ち、裏は全体的に美しい苔を纏った深緑の巨木である。ここは尾根でもなければ谷でもなく、自然林が豊かな森を形成する巨木の密度の濃い場所にあたる。しかし、それにしてもこのイタヤカエデの裏側の苔の見事さには目を見張る。樹皮の全てが苔に覆われているようで、雨が降るとこの苔にたくさんの水が蓄えられることだろう。

 結果的にこの苔は樹皮を乾燥から守り、冬に至っては暖かな防寒着のような役割を果たすのではないだろうか。私の見る限りイタヤカエデの巨樹は、ほかの樹に比べて苔に覆われている部分が多いようである。それは多くの雨水が、幹を経由して地面に流れ落ちることを意味する。苔にしてみれば形状的に、これほど着生するのに都合の良い木もないのであろう。谷のような湿度の多い場所ではなくても、苔はしたたかに生きる術を知っているのである。
 
 撮影日

 上  2010年 10月22日

 下  2011年 10月22日


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