地上高1,3mの位置で、幹の周りが3mを超えるものを一般的に巨樹、あるいは巨木と呼ばれているが、例外的に2mを超えるものでもそう呼ばれる樹種もある。その中にソメイヨシノやエドヒガンを除くヤマザクラの類も含まれている。里に育ったサクラと違い、山中のヤマザクラは確かに巨木にはなりにくいようである。
なかでもオオヤマザクラの巨木は極端に少ない。全国のオオヤマザクラで巨木に登録されているものは10本にも満たず、その殆どが里で育ったオオヤマザクラである。「金岱山のオオヤマザクラ」は紛れもない天然のオオヤマザクラであり、山中では奇跡的にこのように大きく成長したといえるだろう。ミズナラやイヌブナが多いタワ尾根の一角で、その黒っぽい樹皮は「地味」に異彩を放っているようだ。
ただ残念なことに、このオオヤマザクラもこの大きさが限界のようである。このサクラを見上げると、地上10mほどで大きく4つの枝に分かれるが、2本の枝は既に枯死しており一枚の葉さえ見ることができない。さらに残された2本の枝も、けして健全とは言い難くこれ以上の成長を望むのは酷であろう。願わくは現状の痛みが拡がらないことを、ただ祈るのみである。
かつて私が「花」を中心に撮影をしていた頃、サクラの写真集などでオオヤマザクラの存在は知っていた。そのピンクの濃い女性的な色合いは、印象深くとても魅力的であったが、エゾヤマザクラとも呼ばれるように北国でしか見られない樹種だと思っていたものである。ところがこの日原で撮影を始めると、その憧れのサクラが標高900mを超えるあたりから結構目にするこたができることに驚いた。これは、私が日原の虜になった一つの理由でもある。
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