お気に入りの桜



           野陣尾根の真珠

 日原鍾乳洞手前の小川谷橋から、日原林道を遡ること7km。長沢谷を挟んで対岸に迫り出した尾根を「野陣尾根」という。日原の中でもほとんど人の手が入っていない野性味の濃い場所であり、春の新緑と秋の紅葉の美しさでは日原でも指折りのスポットだろう。

 その春の一時期、尾根の下部にこんもりした形のさくらが花開く。樹種はおそらくカスミザクラであろうが、新緑の尾根に一つだけ異彩を放っている。その丸い形から「野陣尾根の真珠」と私が名付けた最も愛着のあるさくらでもある。

 新緑の尾根、ただそれだけでも美しい風景として見応えがあるが、その中に輝く白いさくらを一本添える・・・・。自然とは、時に憎らしいほどの芸術を演出する。それも一年のうちで僅か一日だけの儚い作品を。


撮影日

1999年5月12日
    



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