水車小屋跡のさくら

　日原川と鷹ノ巣谷の出会いの地にあり、集落の人にとっては「歓待のさくら」と共に馴染みぶかく、生活に密着した身近な存在といえるだろう。樹種はエドヒガンと思われるが、その満開の時の美しさたるや日原一と言っても過言ではない。

　日原はかつて、春と秋に一石山神社の例祭があった。現在は年に一度、秋に行われるようになってしまったが、このさくらは決まって春の祭りの時期に咲いていたという。そして当時、このさくらの脇を流れる鷹ノ巣谷には水車小屋があり、集落の生活を支えていたという話を土地の古老に伺ったことがある。

　近年、このさくらの隣に成長した杉が、さくらよりも梢を伸ばし勢力圏を拡大いている。そのためにさくらは圧迫されているような形となり、残念ながら毎年その美しさを失っているようだ。見る場所によっては、日原のシンボルでもある「稲村岩」を背景にこのさくらが咲き誇る姿を望めるだけに、環境の改善を求めてやまない。


　　　　　　　　　 撮影日

　　　　　　　　　　　　１９９８年４月１６日


　　　　　　　　　　


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