東京最後の聖域「にっぱら」
 巨樹・巨木
 
滝上のトチノキ 
幹周  4.65m      樹高  28m       標高  895m 
 
 
 日原の史書である「日原風土記」によると、今ではその場所も知る人がいない地名の中に「栃平」がある。しかし、似たような名前でミズナラの巨樹・巨木が残された「楢平」(ナラテイロ)は、なんとか現代まで地元の人に語り継がれていた。楢平をナラテイロと呼ぶのであれば、栃平はトチテイロと呼ぶのが自然であろう。そして私は、もしかしたらここがトチテイロではないか、という場所に見当をつけている。

 日原のトチノキの数はそれこそ山ほどあるが、幹周が5mを超える巨樹となると僅か5本しか見つかっていない。そのうちの2本は、直線距離で20mという近さにある。、その2本の一つは「蝋燭のトチノキ」であり、もう一方は「熊宿のトチノキ」である。そしてこの「滝上のトチノキ」は、熊宿のトチノキと蝋燭のトチノキを結ぶ直線上にあり、日原本谷にある滝(幻冬の滝)を見下ろす位置にあるためにこの名前がある。

 そしてこの滝上のトチノキと、蝋燭のトチノキとの距離は10mほどであろうか。幹周は5mには届かないが、トチノキとしては立派過ぎるほどの巨樹である。さらに、大きなトチノキは他にもあった。蝋燭のトチノキの左下4mの位置には、かつて巨樹であった思われる幹の半分を失ったトチノキが今でも枝葉を広げている。つまりこの森は、半径15m内の狭い範囲に、かつて5m前後のトチノキが4本もあったことになるのだ。

 この森は現在、我々の仲間内では「熊宿の森」と呼ばれている。大きいものに限らず、小さなものも含めたそのトチノキの密度の濃さは驚くほどである。ここをトチテイロと呼ばずして、どこを呼ぶのかと言うのが私の偽らざる心境である。残念ながら、蝋燭のトチノキも熊宿のトチノキも主幹を失い、全盛時の姿には程遠く樹勢に翳りが見えている。このトチテイロと思しき熊宿の森のシンボルが、この滝上のトチノキとなる日もそう遠くないのかもしれない。
 
 撮影日

 上  2009年  8月02日

 下  2009年  8月02日


   日原の巨樹・巨木

   樹種別巨樹・巨木

   トチノキの巨樹

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