東京最後の聖域「にっぱら」
 巨樹・巨木
 
蝋燭のトチノキ 
幹周  5.58m      樹高  12m       標高  900m 
 
 
 木には、「急所」というものがあるのだろうか。人の心臓や脳のように、ここを失えば死を意味するような、そんな致命的ともいえる部分を樹木は内包しているのだろうか。このトチノキの姿を見るたびに、いつも私はこの疑問と対峙しなければならない。

 2000年2月、広葉樹が一切の葉を落とした冬枯れの季節に、私はこの巨樹と出会った。左の写真を見て、この木が生きていると思われる方がいるだろうか。もちろん、私も騙された。「ああ、立派な巨樹だったのに・・・・」という具合に、不覚にも一枚の写真を撮ることも無くその場を後にした。

 一週間後、再びこの森を訪れた。といっても目的は他の巨樹だったのだが、ついでにこのトチノキにも足を運んでみた。木を見上げる。すると、先週は気付かなかったところに目が止まった。折れた幹の下から伸びた数本のか細い枝先に、冬芽が膨らんでいるではないか。「生きている!」と思った途端、猛烈な感動が込み上げてきた。幹周りの樹皮は剥げ落ち、生きている部分は僅かである。 しかし、それでも生きることを止めようとはしていない。

  そこで私は、「蝋燭のトチノキ」と名付けた。蝋燭にも似た幹折れの樹形もさることながら、 僅かに伸びた枝から、命の炎を灯しているように見えたからだ。 2008年5月18日現在、その細い枝には、今年もしっかりと大きな葉を広げてくれていた。 残念ながら8年前より木の痛みが進んでいるのは気がかりだが、願わくばこの私よりもさらに生き永らえてもらいたいものである。 植物の生命力は、人には計り知れないものだろうから。
 
 撮影日

 上  2000年  3月07日

 下  2000年  6月21日


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