東京最後の聖域「にっぱら」
 巨樹・巨木
 
名栗沢のトチノキ 
幹周  5.50m      樹高  24m       標高  950m 
 
 
 地図で見ると分かりやすいのだが、日原林道の八丁橋から終点までの5.5kmほどの道は、天祖山の麓を日原川沿いに登り上げる道でもある。そして、その道の途中に良く似た地形を持つ二つの谷があり、集落に近い方を名栗沢、遠い方を鍛冶小屋窪という。不思議なことに似ているのは地形だけではなく、林道上の右岸側急斜面にはそれぞれに見事なトキノキの巨樹が根を張っている。

 二本ともその地の名を借りて、「名栗沢のトチノキ」と「鍛冶小屋窪のトチノキ」と呼ばれているが、日原では以前からよく知られた巨樹の代表的存在だった。単なる偶然なのかもしれないが、標高もさほど変わらず、幹周もほぼ同じくらいの大きさであることから、数百年前に種から芽を出した時期もほぼ一緒と言えるのではないだろうか。なにか、宿命じみた関わりを感じる二本のトチノキである。

 現在では、この二本のトチノキの根元に到達できる遊歩道が設けられているが、私が左の写真を撮っていた頃には、頼りない獣道程度のものがあるに過ぎなかった。しかし、転落事故が起きたり、「巨樹の里」としての整備事業として、数年後に遊歩道が完成した。多くの人が巨樹に触れられる・・・という面では、確かに意味のあることなのだろう。しかし、私のように自然のままの巨樹を撮影したい者にとって、この遊歩道の敷設は痛かった。以来、特に名栗沢のトチノキを撮影は、それまでに比べて減ってしまった。

 ただ、それはあくまでも私個人の都合であり、この巨樹の魅力が無くなったわけではない。ここから名栗沢を遡って行くと、何本ものトチノキの巨木に出逢うことができるが、やはりその存在感においては比べ物にならない。5.5mを誇る幹の割りにはスマートな樹形で、むしろ若々しささえ感じるほどだ。もちろん、樹勢の衰えなどは全く見せていない。熊宿のトチノキが倒伏した今、日原林道沿いにある名栗沢と鍛冶小屋窪の二本のトチノキは、今後何百年も競い合うようにして成長を続けてほしいものである。

                              2010年7月02日   一葉
 
 撮影日

 上  1998年 11月25日

 下  2000年 11月08日


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