東京最後の聖域「にっぱら」
 巨樹・巨木
 
人形山のシオジ 
 
幹周  5.50m      樹高  25m       標高  850m 
 
 
 この巨樹は、わたしにとって幻の巨樹であった。この木の存在を知ったのは、もう6年程前になるなるだろうか。当時森林館の職員で、現在は東京都の奥多摩地域のレンジャーで活躍する北山郁人さんが、山仕事の人に案内されて出合ったもので、北山さんと一緒に写ったこの巨樹の写真を見て興奮したものであった。しかし、正確な位置が確認できず、逢いたくても逢えない幻の存在となってしまっていた。

 ところが去年3月、今まで調べたことのなかった尾根の巨樹調査中に、昼食をとってブラブラと窪に降りた時にかなりの存在感を前方に感じた。こうなると、近寄る以外の選択肢はない。幸いにも危険というほどでもないガレ場を横切ると、そこには直径20cmはあろうかと思われる山ブドウの蔓を絡ませた、巨大なシオジが仁王立ちしていたのだ。それは、かつて見た幻の巨樹写真の記憶が甦った瞬間でもあった。

 とにかく、これほど野性的な風貌の巨樹は少ないだろう。絡んだヤマブドウの存在もさることながら、幹の瘤や深く刻まれた皺、さらに急斜面に立つ巨樹独特の根の張り方など、山に自生する巨樹の凄みに圧迫されるほどであった。ただこの時は、カメラをかなり離れた場所に置いていたために、携帯電話のカメラに収めただけに留まってしまった。

 次回は葉の出た頃に来ようと思っていたのだが、いろいろなことが重なって訪問はならず、やっと再訪できたのは半年も経った9月半ばであった。この時の撮影は、蚊やダニの攻撃、さらにはスズメバチの威嚇に悩まされ、かなりの辛抱と恐怖に苛まれたものである。しかし、生い茂る木々で鬱蒼とした窪地は、この巨樹の野性味をさらに引き立ててくれたのもまた事実であった。

 
 撮影日

 上  2008年  9月14日

 下  2008年  9月14日


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