東京最後の聖域「にっぱら」
 巨樹・巨木
 
名栗沢のネジリモミ
幹周  5.30m      樹高  23m       標高  1050m 
撮影日  (左) 2009年2月07日   (右) 2000年3月29日 
 
 
 モミは、針葉樹の中でも比較的成長の早い樹種である。似たような環境に育つツガやカヤに比べて、モミは年輪も緻密ではなく、それだけ大木になるにも年数を要さない。もちろんそれは、あくまでも木を基準としたものであり、幹周3mを超えるような巨木になるには、人の一生などでは到底及ばない歳月を生き抜いているのは言うまでも無い。

 2009年2月、私は久しぶりにこのモミの許をを訪れた。この時は、初めてこの巨樹と対面する2人の同行者がいたこともあり、幹周の測定を一緒にやってみることにした。すると、メジャーが示したその数値は予想を遥かに超えていた。なぜなら、従来の値よりも25cmも大きかったからである。それは2000年の全国巨樹・巨木林調査の際に計測された数値であった4.75mが、9年で5mの大台に到達したことになる。

 モミは巨樹になったとしても、幹は円柱に近い形を保つため、測定の誤差は他の樹種ほどは出ないものである。今回も念のために2度行ったが、ほとんど誤差は見られなかった。単純に計算すると一年で2.8cmづつ幹が太くなり、直径は9年で8cmも増え、年輪の幅は4.4mmということになる。このデータは、ネジリモミが現在も逞しい生命力を維持していることを示していると言えよう。

 今回、このモミとの出会いで感じたものは、かつての訪問とはかなり違ったものだった。猛禽類の爪を想わせる見事な根張りや、この名前の由来でもある幹のネジレは相変わらずだが、圧倒するような迫力や、戦国武士のような存在感が体中から発散されているようだった。年に一人も訪れることのないであろうこの巨樹は、同行の2人と共に久々の訪問者である私を、さらなる風格を持って迎えてもらえたような気がした。


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