東京最後の聖域「にっぱら」
 巨樹・巨木
 
懸崖のツガ
 
幹周  4.35m      樹高  20m       標高  1000m 
 
 
 「懸崖(けんがい)」という言葉をご存知だろうか。盆栽の知識が少しでもある方ならば、数ある樹形の一つであることはご承知であろうが、少しだけ説明をさせていただきたい。盆栽の樹の先端部分が鉢縁よりも下にあるものを総じてこう呼び、自然環境の中で断崖絶壁にしがみつくように生きる樹々を模したもので、生命力のたくましさや自然の厳しさなを表現しているものだそうだ。このツガを最初に見たときに、この「懸崖」という言葉が私の頭にパッと浮かんだ。

 日原の巨樹の中で、岩の上に根付いたものはけして少ないないが、これほどの大岩の上で成長した巨樹は他に見たことがない。尾根から突き出した露岩の先端に陣取り、太い巨躯を支えるために根は真横にその大岩を巻いている。本来は幹そのものが「懸崖」の条件で、この巨樹がそれをを満たしているとはいえない。しかし、大岩という鉢縁からその外側に大きく枝を伸び拡げた樹形は、懸崖のいうところの「生命のたくましさ」や「自然の厳しさ」そのものであろう。

 ところで最近、私はこの巨樹の根元に立ってみたが、改めてその立ち居地の凄さに驚かされた。根元からの傾斜角は90度に限りなく近く、木の後ろでジッとしている以外になす術がなかった。ところが、このツガの幹周りをたった一人で計測された方がいる。それは日原で最も多くの巨樹巨木の発見者でもあるT沢さんで、もちろんこの巨樹も1999年に発見されたものである。上の数値もその際に計測されたものなので、すでに十年以上も前のデータということになる。

 私もできるだけ最新の情報をここに載せようの思うので、幹周りの測定はするようにしているのだが、このツガだけはお手上げである。二人でならなんとかなるかもしれないが、それでも危険過ぎる行為である。まったくT沢さんという人は、一体どのようにして計測したのであろうか。このツガ同様に「凄い!」と唸るしかない。

                         2010年7月20日  一葉

 
 撮影日

 上  2012年 11月18日

 下  2012年  5月30日


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