東京最後の聖域「にっぱら」
 巨樹・巨木
 
ヤケゴヤのイヌシデ 
 
幹周  3.10m      樹高  20m       標高  1130m 
 
 
 木々の樹種を見分ける上で、樹皮だけで同定するにはかなりの知識と経験が必要だ。木々の中には、幼木、成木、老木になるにしたがって、まるで違う木であるかのごとくその姿を変えてしまうものも珍しくない。私などはまだまだ未熟で、森に入って木を見ては首を傾げることが多く、最終的には葉の採取をしなければ判断が出来ないことが悔しくもあり、もどかしくもある。

 ただ、このイヌシデという木の老木だけは、恐らく100%の確率で見分ける自信がある。というのも、この木の樹皮は独特で、よく見ると誰にでもわかるような特徴があるからだ。別名「シロシデ」とも呼ばれるように、樹皮は灰白色で縦に模様ができる。老木になると浅い裂け目が入ってくるが、樹形がゴツゴツとして筋張った男性的な風貌になり、似たような種類の多いシデの仲間では、樹皮の縞模様が鮮明であることからも見分けやすいのである。

 日原の森で、3mを越えるイヌシデの巨木は、現在までに僅か3本しか確認されてない。これは全国的に見ても同様で、日本最大のイヌシデの4.46mを筆頭に、全部で38本という希少な巨木でもある。言い換えるなら、巨木には成りにくい樹種になるだろう。このヤケゴヤのイヌシデも、3,1mという幹周以上のインパクトがあり、その樹形の隆々とした肉感には、少なからず驚かされる。実際にはわからないが、ともかく他の木より見るからに堅そうなのである。

 イヌシデを漢字で書くと犬四手となるが、四手とは「紙垂」のことでしめ縄や玉串などに垂れ下がる、細長く切った紙のことを差すそうである。垂れ下がるシデ類の果穂を「紙垂」に見立てたのがこの名前の由来らしい。ちなみに日原の地元民は、この木のことを「ソロ」と呼んでいる。個人的にも大好きな木で、森を歩いている時にこの木に出合うと、思わず触れてしまいたくなる。力強さに憧れるのだろうか・・・。
 
 撮影日

 上  2001年  3月06日

 下  2001年  3月06日


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