東京最後の聖域「にっぱら」
 巨樹・巨木
 
ナラテイロのイナノキ 
 
幹周  3.72m      樹高  22m       標高  1270m 
 
 
 シナノキは日本特産種の樹木で、北は北海道から南は九州まで幅広く分布する落葉広葉樹である。シナノキを漢字で書くと「科の木」になるが、これは長野県の古名である信濃が、かつては科野と記されるほど多くのシナノキ材やその加工品を産出していたことに由来するらしい。材としての評価はイマイチだが、花からは良質の蜜が取れることから、養蜂家にとってはまさに宝の木と言えるのかもしれない。

 ここナラテイロは、ミズナラの巨樹・巨木の密度が非常に濃い場所で、このシナノキもウッカリするとミズナラと見間違えてしまうような風貌をしている。巨木クラスのシナノキになると、樹皮の色や形状もミズナラに似ており、まして葉を落とした季節となると尚更その同定は難しくなる。決定的とまでは言えないが、両者の樹皮の違いを見比べると、ミズナラよりシナノキの方が縦に裂ける線が浅く、幾分ノッペリとした印象を与えるようだ。

 このナラテイロのシナノキは、幹全体に老樹にあるようなコブが多く、3.72mの幹周のわりに堂々とした貫禄がある。大枝の欠損なども見られるが、樹勢は旺盛で枝振りも良く、見た目には健全な状態のようだ。南向きの緩斜面に根付いたその巨躯は、同じクラスのミズナラよりも明らかに存在感があり、幹の途中で二又に分かれる辺りの力感はホレボレするほど魅力的である。

 ある土地に最初の植物が芽生え、長い時間を掛けて森が出来上がる。この気の遠くなるような植物群の遷移の中で、その最終段階の姿を極相林と呼び、ミズナラの巨樹・巨木が林立するような森になるという。ナラテイロはまさにこの極相林の典型で、太古以来、人の手が加わっていない森の証しであろう。この極相林の主役であるミズナラ群の中にあって、シナノキやミズメの巨木は脇役ながらも異彩を放ち、それぞれに自己主張をしているように思えた。

                 2011年11月12日 一葉
 
 撮影日

 上  2009年 12月23日

 下  2012年  1月30日


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