東京最後の聖域「にっぱら」
 巨樹・巨木
 
竪琴のカツラ 
幹周  5.00m      樹高  30m       標高  1150m 
 
 
 木の造形は、その木が育った環境に大きく左右されるが、山の中の木となればなおさらそれは顕著になり、厳しい競争社会に生き残るために、木はあらゆる知恵を振り絞って自らの体を環境に適応させようとする。その樹種独特の樹形というものもあり、環境と樹種が木の造形を決定すると言えるのかもしれない。

 若木の頃のカツラは、他の木々と変わりなく一本樹として成長する。それがある程度の成長を遂げると、根元から孫生(ヒコバエ)といわれる新たな若木が迫り出し、巨樹と呼ばれるようになる頃には無数の孫生が最初の一本樹(主幹)を取り囲むような樹形になるようである。その孫生の成長に伴い、もとの主幹は勢いを失い、大きな巨樹ともなればほとんどの場合枯死しているものである。

 この竪琴のカツラは、幹周が5mにもなる立派な巨樹ではあるが、カツラとしてはまだまだ若々しい。主幹も衰えは見られず、成長した孫生を左右に従えた樹形をしている。写真では分からないが、面白いことにこのカツラは扁平な形をしていて、真横から見るととても巨樹には思えないほどである。かつて私はこのカツラを見つけた時、すぐさま竪琴のようだと思ったほどである。

 山の中にしては平坦な場所に根付き、日当たりも良い南斜面に育っているせいか、極端なクセのない整った樹形をしているのかもしれない。しかし、それはそれでカツラの見本のようでもあり、見上げる姿は惚れ惚れするほど美しい。目を閉じて耳を澄ませば、風の音に乗せて森の中の竪琴が、その姿と同じように優美で伸びやかなメロディを醸し出してくれているようである。

 
 撮影日

 上  2002年  3月12日

 下  2002年  4月09日


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