東京最後の聖域「にっぱら」
 巨樹・巨木
 
賀老大滝のカツラ 
幹周  未測定 (5m超)      樹高  30m       標高  1050m 
 
 
 山の高所から流れ落ちる谷川の水は、大小様々な滝を経て高度を下げて行く。谷の多い日原にも数多くの滝があり、なかでも小川谷の支流の賀老谷を遡ると、三つの見応えのある滝に出逢うことができる。賀老大滝はその最深部に位置して、落差30mを誇る日原有数の名瀑である。水量豊かというわけではないが、岩肌を伝い流れ落ちる水の美しい軌跡は、どちらかと言えば女性的な柔らかさを連想させる。

 その賀老大滝を目前にして谷筋を歩いていると、右岸側の急斜面から只ならぬ存在感に驚かされることになる。それは、かつて太かったであろう主幹を失いながらも、周りに育った孫生(ヒコバエ)が成長して巨大化したカツラである。木の下が岩場になるために、その根は表に現れ、まるで意思をを持った蜘蛛の足のようでもある。下から見上げると、今にも動き出しそうなその迫力に足が竦む想いがするほどだ。

 残念ながら地形的に危険過ぎて、幹周りの計測は出来ない。しかし、5mを超える巨樹であることは疑いようも無く、また無理をして計測する必要もないだろう。賀老大滝に至る手前にこの凄い樹形をしたカツラの巨樹がある、というだけでも充分に価値があるのではないだろうか。このカツラの真下の谷底からは、木々の枝越しに僅かに大滝を垣間見ることができる。カツラと大滝の両方にとって、お互いの魅力をプラスする存在と言えるだろう。

 ところで、これはあくまでも私的な考えになるが、私は賀老谷とは本来、「神滝谷(かろうだに)」という字ではないかと思っている。地名とは必ずしも不変なものではなく、その時代や権力者の都合で簡単に変わってしまうものだ。奥多摩の川乗谷は元々「川苔谷」であり、仙元峠は「浅間峠」であった。賀老谷の三つの滝は、恐らく修験道の行者にとっては大切な行の場であり、神滝谷としてこそ地名として意味があると思うのだ。しかし、修験道の衰退と共に消えてしまった地名は、この「神滝谷」以外にも数多いはずである。

 
 撮影日

 上  2009年  7月19日

 下  2009年  7月19日


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