東京最後の聖域「にっぱら」
 巨樹・巨木
 
ヤケゴヤ尾根のエンコウカエデ 
 
幹周  4.05m      樹高  20m       標高  1150m 
 
 
 建築、家具、楽器などの材において、高級と名のつくものの中にイタヤカエデがある。イタヤとは板屋と書き、まさに建築材として打って付けの名前ではあるが、実は葉がよく繁り、板屋根のように樹下にいても雨に濡れないというのが名前の由来だという。

 そのイタヤカエデの仲間に、エンコウカエデと呼ばれるものがある。葉の形がテナガザルの手を思わせるところから猿喉(エンコウ)の名が付いたらしい。なんとも愛敬のある名前だが、葉っぱ以外はイタヤカエデと何ら変わるところはない。

 ヤケゴヤ尾根は、「五本グリ」を始めとするクリの巨木の森でもあるが、その五本グリの目と鼻の先に、このカエデはある。五本グリが男性的な巨樹であるのに対し、こちらの方は女性的なやわらかな樹形をしている。ただ、全体に苔に覆われた樹皮は、五本グリと共にこの地を見守り続けてきた「年季」を感じさせてくれる。さらに、太いヤマブドウの蔓が梢にまで絡みつき、共存の長い歳月を物語るようでもある。

 近年の台風で、左写真の右側の幹、その最初の大枝が折れてしまった。その裂けた傷口をまだ折れて間もない頃に見たことがある。それはなんとも美しい光沢を放ち、さすが高級材という片りんを窺わせてくれた。巨樹も好きだがその材にも興味のある私は、その枝をできるなら持ち帰りたい衝動に駆られたものだ。
 
 撮影日

 上  2001年  3月06日

 下  2002年  4月30日


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