東京最後の聖域「にっぱら」
 巨樹・巨木
 
双頭のイヌブナ 
 
幹周  4.30m      樹高  28m       標高  1100m 
 
 
 巨樹・巨木の好きな人は全国に数多い。なかでも樹種として白ブナは高い人気を誇り、山中で大きなものが発見されたりすると、新聞に取り上げられることも少なくはない。確かに白い樹皮を持つ白ブナは、森の中では一際見栄えのする存在で、私自身も大好きな樹種の一つである。反面、黒ブナと呼ばれるイヌブナの方はというと、今まで新聞などに取り上げられたことは無いのではなかろうか。

 しかし、人の世に異端児という者がいるように、黒ブナの中にも「らしからぬ」木が存在する。本来イヌブナは、主幹の周りに孫生え(ひこばえ)と呼ばれる新たな幹が成長して、単木の巨樹に比べると疎らな感じが否めず、やや迫力に欠けるものである。ところが、「犬麦谷の大ブナ」やこの「双頭のイヌブナ」は、このような黒ブナの特徴が希薄なばかりではなく、むしろ白ブナに良く似た樹形を持つ変わり種である。

 左の写真でお分かりの通り、このイヌブナは見事な一本樹である。地上3m付近では、どちらが主幹かも判断できないような同じ太さで枝分かれしており、二本の枝ともそのまま真っ直ぐに梢まで伸びている。このような樹形の木が珍しいわけではないが、ことイヌブナに関しては滅多に見られぬ異端児的な存在であろう。その巨体を支える根の張りも、これまた見事という他はない。希少性という面からいうと、間違いなく同じ大きさの白ブナ以上である。

 ところが全国的に見ると、このイヌブナの認知度というものはかなり低いと言わざろう得ない。全国の巨樹・巨木のデータを集めた森林館のデータベースにも、イヌブナの登録は驚くほど少なく、そのうちのほとんどが日原山中のものである。同じブナの仲間でありながら、白と黒ではこうも関心が違うものかと思ってしまう。ただ当の木にとっては、人が注目をすることが果たして幸せか・・・というと、けしてそうとは言えないのがもどかしいところでもある。

                            2010年7月11日  一葉

 
 撮影日

 上  2010年  7月03日

 下  2010年  7月03日


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