東京最後の聖域「にっぱら」
 巨樹・巨木
 
長沢谷上のブナ 
 
幹周  3.60m      樹高  23m       標高  1200m 
 
 
 恐らくこのブナの存在を知る人は、地元にさえもいないのではないかと思えるブナの巨木である。余程の目的でもなければ、ここに足を踏み入れる必要もないような目立たない場所にあり、実際人の訪れた気配が全くしないのだ。危険という程でもない尾根の斜面に立ち、根がよく発達した逞しい樹形のブナである。

 しかし、なぜそんな場所に私が入り込んでしまったかというと、これも曖昧な表現だが「気配」としか言いようがない。この当時、2000年環境省巨樹・巨木林フォローアップ調査なるものが実施された年でもあり、私個人としてもかなりの数の巨樹・巨木の発見、調査を進めていた。人間、そんなことを繰り返していると、どうやら異常に巨樹に対しても感性が鋭くなるようである。

 このブナを見つけた時にもそうだった。山道を歩いていると、何かに呼ばれるような「気配」を感じるのである。この場合は道の上の方からで、私としてはその誘惑?を絶ちがたい心境になった。早速道を外れ、スズタケの中を獣道だよりに登り上げて行くと、白い樹皮をした巨木が姿を現したというわけである。この「気配」を感じる感性は、残念ながら私だけが持つ才能などではなく、巨樹探しをしている人に共通して備わるもののようである。

 当時3.60mという幹周のブナは、それまで私が見つけたブナの中では最高であった。地上1.5mほどで二股に別れる樹形は、それまでに見てきた直菅系のブナに比べて重量感があり、「これも白ブナなんだ」と妙に感心したことを憶えている。それは私が東京にも立派なブナがある、と認識した日でもあったのかもない。
 
 撮影日

 上  2009年 11月22日

 下  2009年 11月22日


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