東京最後の聖域「にっぱら」
 巨樹・巨木
 
熊宿の森のブナ 
 
幹周  3.54m      樹高  27m       標高  920m 
 
 
 日原林道のかなり奥に、「熊宿の森」と名付けれた巨樹の群生地がある。この森の主役は「熊宿のトチノキ」(枯死)であり、この森の名の由来ともなっている。しかしこの熊宿の森のブナは、その「熊宿のトチノキ」の名前の由来にこれまた一役買っているのだ。

 熊宿のトチノキの「熊宿」といのは、あくまでも想像の域を出ないのだが、このブナは正真正銘のツキノワグマの痕跡が残されている。ツキノワグマはブナの実が大好物で、秋になると実が落ちる前に木に登って上手に食べている。しかしブナの木の樹皮は、他の木よりも平坦で滑りやすいためにクマは木にしっかりと爪を立てて登ることになり、その爪痕が幹にはっきりと表われるというわけだ。時には爪を滑らせた後も残されていて、苦労の様子が目に浮かぶ。

 「熊宿の森のブナ」にもそのクマの爪痕が鮮やかに残されていて、この一帯がクマの活動する場所であることはいうまでもない。トチノキやカツラの5mを超える巨樹を筆頭に、イタヤカエデ、ケヤキ、サワグルミなどの多くの巨木を育むこの森は、野生動物たちにとって生きるためになくてはならない場所に違いない。

 私自身、野生のツキノワグマをこの日原で見かけたことは2度ほどあるが、残念ながらこの「熊宿の森」において目撃したことはない。美しい樹形のこのブナに、クマが登っている姿を一度は見てみたいと思うのだが、本当にいたとしたら一目散に逃げ帰るのが関の山だろうか。
 
 撮影日

 上  2000年 11月07日

 下  2010年  7月25日


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