巨樹・巨木 
 
ナラテイロのミズナラ 
 
 幹周  5,32m(2009,12,13計測)        樹高  28m        標高  1260m
 
 
 日原林道の奥深く、その道上の森の中にナラテイロと呼ばれる場所がある。ナラテイロとは「楢平」が転化したもので、その名の通り楢の巨木が森を形成している山中にしては珍しく平なところである。地元の記録である「日原風土記」には、他にも「栃平」と呼ばれるような場所もあったようだが、今ではそれがどこであるかもわからなくなっている。

 ナラテイロは、幸いにも現在まで地元の人にその在り処を知られていた。しかしそのナラテイロとは、両側をスギ・ヒノキの人工林に挟まれた細長い地形でしかない。むしろ、何故ここが人工林にならなかったのかが不思議なくらいである。これは想像の域を出ないが、ミズナラの巨木の森であったことがナラテイロの消失を妨げたのではないだろうか。それはミズナラが、キノコの王様「舞茸」とは切り離せない関係にあることと、全く無縁には思えない。


 このミズナラは、ナラテイロの最大の巨樹であり中心に鎮座するシンボルでもある。下写真の左大枝が折れてはいるが、幹そのものは痛みもなくさらに成長を続けるような勢いがある。平らな場所に育ったせいか、地面からスーッと天に向かって伸びた幹は、クセのない見事な直菅系であり、不謹慎ではあるが材にすれば間違いなく良材のお墨付きを貰えるだろう。

 しかし、周りの森が人工林になってしまったにも関わらず、このミズナラとナラテイロの森はは残されている。日原の山奥まで延びる日原林道が開通して以来、数多くの巨樹が伐採・搬出の憂き目にあっているが、集落に恵をもたらすこの森に手を付けることには、地元の人も忍びなかったのではないだろうか。現在は東京都の管理下にあり、禁伐の森へと待遇?を変えているが、集落の過疎化とともにこの地を知る人も減っている。舞茸の在り処も、いつか忘れ去られていくのかも知れない。

 
 撮影日

 上  1999年 10月13日

 下  2003年 12月14日


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