巨樹・巨木
 
犬麦谷のミズナラ2
幹周  5,37m        樹高  30m        標高  900m 
 
 
  日原のミズナラの巨樹の中で、一番急斜面に立つのはこの木ではないかと思っている。写真では分からないが、根元の傾斜角度は45度はあるだろう。ちなみにスキーのジャンプ競技に使われるジャンプ台は、テレビなどで見る限りではとんでもない急斜面に見えるが、それでも傾斜角35~37度ほどである。45度がいかにキツイ斜面かがお分かりいただけるだろうか。

 ところがこの急斜面に立つ勇者から、近年世代交代を狙う木が現れた。それは、すぐ隣に立つミズメの木である。ミズナラの根元に落ちた種が発芽して、今や樹高ではミズナラに引けを取らないほどに成長しているが、幹周はまだ1mほどではないだろうか。しかし、ミズメは確実に年老いたミズナラから、この場所の主導権を奪い取ろうとしているように思える。その根拠は、まさにその根元の攻防に現れている。

 下の写真をご覧いただきたい。左側のミズメの木から伸びた根は、45度の急斜面に流し伸ばしたミズナラの根の上を通り、その先の地中に潜り込ませている。しかし、これは共存というような生易しいものではない。なせなら、ミズメの成長は、当然その根を太くしていく。つまり、結果的にミズナラの根を締め上げていくことになるのだ。そしてその兆候は、すでにミズナラの根にかなり深く刻み込まれている。

 いつの時代も若者が社会を変えていく。しかし数百年を生きたミズナラは、そう簡単にはミズメに屈するとは思えない。老いたミズナラにしても、過去幾度と無く若者の台頭を凌いでこの場所に君臨してきたはずである。私の生きている間に、この2木の攻防が決着を迎える日が来るのだろうか。それとも以外にも両雄並び立ち、何事もなかったかのように仲良く身を寄せ合って生きているのだろうか。
 
 撮影日

 上  2000年  5月23日

 下  2000年  5月09日


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