巨樹・巨木
 
  ハナノキ尾根のミズナラ
  幹周  5,30m        樹高  25m        標高  1200m
 
 
 「神の木」と呼ばれる木がある。一本の木の幹から、同じ大きさの枝が三方に別れて成長したものをいうのだが、全国各地にそのような伝承があるようで、その木を切ってはならないことも共通の掟であり、、特定の樹種だけを差すのものではない。そうした「神の木」が全国の山に残された結果、巨樹になった例も少なくないのだろう。

 このハナノキ尾根のミズナラも、ご覧の通り見事に「神の木」の形をしている。5.30mを誇る幹から三方に拡がるそれぞれの枝は、一本でも充分大きなミズナラといえるほどで、数値以上に迫力のある樹形をしている。ハナノキ尾根においても最大の巨樹でもあるこのミズナラが、「神の木」であったという伝承はないのだが、それはこの地において当然のことでもあるのだ。

 かつて日原は、「日原鍾乳洞」を本宮とする修験道栄えた地域であり、鍾乳洞脇を流れる小川谷(大日谷)の流域は、全ての樹木の伐採を禁じる「不伐の森」であった。ハナノキ尾根はその流域にあり、森そのものが「神」として大切に守られてきたのである。あえてこの巨樹を、神にする必要もなかったのだ。

 残念ながらこの不伐の森も、戦後の拡大植林政策の波に飲まれて多くの自然林を失った。ハナノキ尾根も、この巨樹に辿りつくまでにはひたすら人工林を登ることを余儀なくされる。ただ、このミズナラのある一帯は不思議と自然林が残されており、日原で最も巨樹・巨木の密度の濃い場所と言っても過言ではない。「神の木」は伐らないという掟は受け継がれていた、と信じたいものである。
 
 撮影日

 上  2007年  5月29日

 下  2001年 12月18日


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