東京最後の聖域「にっぱら」
 巨樹・巨木
 
翠竿のオノオレカンバ 
 
幹周  3.85m      樹高  18m       標高  870m 
 
 
 オノオレカンバは別名ミネバリ(峯張り)の名が示す通り、尾根でよく目にする樹種である。土壌が痩せているガレ場や岩場にも生育し、なかなか樹種を同定しにくいカンバ類の中で、樹皮に独特の特徴を持っている個性派である。しかしそれは、幹周りがある程度大きくなった成木や老木においてのことであり、幼木の頃はやはり樹皮だけでは他のカンバとは見分けにくい。

 この「翠竿のオノオレカンバ」は、単木としては日原一の大きさを誇る大物である。と同時に、全国でもこれ以上のオノオレカンバは、環境省のデータベースには報告されていない。つまり、マイナーな樹種ではあるが日本一なのである。他にも同じカンバ類の「ハナノキ尾根のヤシャブシ」や、「人形山のシオジ」などもマイナーながらもやはり日本一の大きさ誇っている。実は、このマイナーな巨樹・巨木の多さこそが日原の森の豊かさを証明している。

 この私のHPで紹介している巨樹・巨木の樹種数は、すでに枯死したものも含めて23種あるが、私の知る限り日原には35種が存在する。かつて私は、植物の研究者に話を伺ったことがあるが、日原の樹種の多さはあの白神山地とは比べ物にならないほどの豊富さらしい。それは日原の緯度や標高が大いに関係していることだが、一つのエリアでこれほどの多くの樹種が育つ環境が身近にあることを、私などは幸せに感じずにはいられない。

 ところで、「翠竿のオノオレカンバ」の翠竿、とは私が勝手に作ったもので、意味はそのまま翠(みどり)の竿(さお)ということになる。この木は、日原川の清流に倒れこむような樹形をしながら急斜面に踏ん張っているが、その姿が釣糸を日原川に垂れている釣竿のようであった。かなりの老木のようで、体全体に苔を纏っており、オノオレカンバ独特の樹皮も判らないほどである。しかし、この木にとってはこうして澄み切った水の流れを毎日見下ろしていられたら、体を覆いつくした苔の存在など全く苦にはならないのかもしれない。

                          2009年11月23日   一葉
 
 撮影日

 上  2009年 11月23日

 下  2009年 11月23日


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