東京最後の聖域「にっぱら」
 巨樹・巨木
 
金岱山のミズメ 
 
幹周  3.80m      樹高  25m       標高  1260m 
 
 
 木の名前は、必ずしも一つとは限らない。よく知られたところでは、モミジがカエデと呼ばれることであろう。山で見られるイロハモミジは、別名タカオカエデ、イロハカエデ、コハモミジとも呼ばれ、それぞれに名前の由来があるのだろうと思う。ミズメも別名アズサ、ヨグソミネバリとも呼ばれ、やはりそれぞれに由来がある。日原ではよく見られる樹種ではあるが、巨木のミズメを見かけることは稀である。

 ミズメの名は樹皮を刃物で傷つけると、水のような樹液がでることによる。以前、私は春先に雪で折れた枝から、ポタポタと雨のように樹液を降り注ぐミズメに出会ったことがある。試しに口を開けて含んでみたが、たしか無味だったような記憶がある。そしてアズサの名の由来だが、かつてミズメは弓にも使われていた。万葉集などにも出てくる「梓弓」のアズサはミズメの古名なのだそうだ。上高地にある「梓川」も、このアズサのことであることはいうまでもない。

 しかし、問題はヨグソミネバリという呼び名である。漢字で書くと「夜糞峰榛」という、異臭を放つような文字になる。ミネバリはオノオレカンバのことで、つまり臭いオノオレカンバの意味になる。実はミズメの枝を折ったり、樹皮を剥いだりするとサルチル酸メチル(鎮痛剤のサルメチール)の臭いがするのだ。我々現代人は、その臭いにすっかり慣れてしまっているのでそれほど気にならないが、先人にとってはそれこそ「糞」に値する臭いだったのかもしれない。

 「金岱山のミズメ」は、確認されている中ではこの樹種で日原最大の大きさを誇る。しかし、少なからず痛みも抱えており、もはやこれが成長の限界だろうと思う。金岱山直下の森にあり、この木に続く道もなければ、その存在を知る人も少ない。他の樹種の巨樹に比べて幹周りは細いが、実はこれでも全国で五本の指に入るほどの太さである。金岱山には、ミズナラ以外にもこのような隠れた名木が点在している。
 
 撮影日

 上  2010年  1月16日

 下  2002年 10月22日


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