東京最後の聖域「にっぱら」
 巨樹・巨木
 
名栗沢のイロハモミジ 
 
幹周  2.80m      樹高  18m       標高  950m 
 
 
 小川谷橋から日原林道を遡ること5km弱。するとそこには、日原川左岸へと流れ落ちる名栗沢が林道を横切ることになる。かつて名栗沢は、日原の特産物である山葵栽培が行われていた。しかし集落の過疎化や住人の高齢化のために、石を組み上げて作られた立派な山葵田は、残念ながら今や荒れるに任せた廃田と化している。そんな名栗沢には、今日に至るまで山葵田の盛衰を見守ってきた、一本のモミジの名木がある。

 名栗沢には良く知られたトチノキの巨樹があるが、沢を挟んだ対岸にこのモミジの巨木はある。林道からもその姿はよく見えて、この2枚の写真も林道からの撮影である。根元に近づくにはちょっと苦労するが、その幹はゴツゴツと力感溢れてとてもモミジとは思えないほどだ。さらに全体の樹形は、魚が掛かった釣竿の如く谷側に湾曲している。そのために、モミジの梢は林道に覆い被さるように伸びている。

 ある年の秋、私はこのモミジの紅葉の時期に偶然にも出くわした。今まで緑の中にカモフラージュされて、何の木なのか気にも留めていなかったが、その目を見張る美しい紅葉には少なからず衝撃を受けた。折りしも午後の陽射しはモミジの葉を透かし、風が吹けば燃え立つように枝葉は揺らめいた。その妖しいまでのモミジの舞は、林道で一人見つめる私を夢中にさせたのは言うまでも無い。とびっきり色っぽい女性を想わせる艶やかさである。

 カエデ科の中で、イロハモミジは巨木にはなり難い樹種である。特に山中のモミジは、幹周が2mもあれば立派な巨木と言えるだろう。日原にも3mを超えるモミジもあるようだが、私自身はお目に掛かかったことがない。かなりの古木に見える名栗沢のイロハモミジでさえ、大台の3mには一歩及ばないとするのなら、モミジとは随分と成長の遅い樹種なのだろう。出来れば環境省の巨木の指標として、メグスリノキと同様にモミジも2m以上を巨木と定義してもらいたいものである。

        2009年10月10日   一葉
 
 撮影日

 上  2005年 11月13日

 下  2000年 11月07日


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