東京最後の聖域「にっぱら」
 巨樹・巨木
 
錐木小屋のイタヤカエデ 
 
幹周  3.41m (2010.9.20計測)      樹高  20m       標高  940m 
 
 
 イタヤカエデというとカエデの中の一つの樹種のようだが、そのイタヤカエデは日本だけでも多くの種類があるという。エンコウカエデ、オニイタヤ、ウラジロイタヤ、アカイタヤ、エゾイタヤなど、その総称をイタヤカエデと呼ぶようで、それを見分けるには専門家並みの知識が必要であろう。もちろん私もお手上げである。日原で一番大きいイタヤカエデの「ヤケゴヤ尾根のエンコウカエデ」も、本当にそれがエンコウカエデなのかというとちょっと自信がない。

 ただ、それらを全てをイタヤカエデとして見ると、他の木々やカエデ類との区別はつき易いように思う。イタヤカエデの葉は総じて他のカエデよりも大きく、水かきのある水鳥の足を思わせるような形で、やや繊細さに欠ける。紅葉も「黄葉」であり、やや赤味を帯びるものもあるが、真紅になるものはない。そして、他のカエデが巨木になるのが稀であるのに対し、最も巨木になりやすい樹種と言えるだろう。

 この「錐木小屋のイタヤカエデ」は風の通らない窪にあり、谷側に大きく前傾した樹形をしている。全身に苔を纏うその姿は、3.41mという幹周以上の風格を備え、カエデらしい見事な枝振りである。左写真の後方にある木もイタヤカエデで、これも3mを超える大きさを誇る。他のカエデは日当たりの良い場所を好む傾向にあるが、イタヤカエデは谷や窪のような日照時間も少なく湿度の高い場所にも適応して、このように巨木にまで成長するものも珍しくないようだ。

 このように、他のカエデとは少し性質の違うイタヤカエデではあるが、人が使う材としての価値は高い。私はかつて、落ちた枝の輪切りをサンドペーパーで磨いたことがあるが、光沢のある滑らかな質感に感動したものだった。専門家の間では、美しい杢目が出る材としてもよく知られている。葉の形は粗雑な感は否めないが、イタヤカエデはその内部に繊細さを秘めているのかもしれない。

           2010年10月03日 一葉
 
 撮影日

 上  2010年  9月20日

 下  2010年  9月20日


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