東京最後の聖域「にっぱら」
 巨樹・巨木
 
ハナノキ尾根のイタヤカエデ 
 
幹周  3.15m      樹高  24m       標高  1200m 
 
 
 日原にはハナノキオネと呼ばれる場所がある。同じ日原の山中には、シオジクボ、トチノキクボ、ヒノキオネ、オオブナオネなど樹木の名前を冠した地名があるが、おそらくその樹木が多く生育している、あるいはしていた場所に違いない。ところが、ハナノキオネだけはどうも事情が違うようだ。なぜならハナノキ(花の木)とは、長野県南部・岐阜県南部・愛知県北東部の3県県境のおもに木曽川流域の山間湿地にだけにしか自生しないからだ。

 ハナノキとはカエデ科カエデ属の落葉高木で、その葉っぱはやカラコギカエデやウリカエデによく似ている。そのハナノキが、なぜ日原のとある尾根の名前に付けられたのかは、この葉の類似性に関係しているのではないだろうか。つまり、尾根の命名者がべつの種類のカエデをハナノキと間違えた・・・と考えるのが妥当だろう。自生地なども当時はよく知られていなかったのかもしれない。

 このハナノキ尾根のイタヤカエデも、同じカエデ科カエデ属の仲間である。しかし、ハナノキとは似ても似つかない葉の形をしているので、このカエデが間違われた可能性はないだろう。枝振りが良くヤマブドウの蔓が絡まるその姿は、野性味溢れる男性的な風貌で、カエデの持つ上品なイメージとは程遠い感がある。カエデと言えど、やはり巨木は巨木なのである。

 日原には同じく自生地の少ない他のカエデが存在する。ホソエカエデという樹木で、実際には東京にこの木が自生しているという報告はない。しかし、神奈川と山梨には報告があり、その間にある奥多摩町日原に無い方がおかしいのだ。ハナノキ尾根は、そんな日原の森の豊富な樹種を潜在的に示しているようでもある。もしかしたら、ハナノキも・・・、可能性は限りなく低いが淡い期待を持ちたくなる尾根である。

         2013年05月11日 一葉
 
 撮影日

 上  2011年  3月27日

 下  2011年  3月27日


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