東京最後の聖域「にっぱら」
 巨樹・巨木
 
小川谷上のイヌブナ 
 
幹周  4.84m      樹高  25m       標高  1080m 
(主幹 3.62m  株立数 2) 
 
 日原の谷は、大きく分けると日原川水系と小川谷水系に分かれる。日原川本流を地元では大川と呼び、そのもう一方が小川谷ということだ。その小川谷とは酉谷山を水源として流れ落ち、日原鍾乳洞より少し下流で大川と合流するまでの名称となる。小川谷の上流域の山々には、酉谷山避難小屋くらいしかなく、人の影も薄い静かな森が拡がっている。

 そのせいであろうか。小川谷の水流は、惚れ惚れするほど美しい。多少の雨が降ってもその水が濁ることもなく、中流域の森の中で見る小川谷は、そこが東京であることをすっかり忘れさせてくれるほどである。しかしそこは粉れもなく東京都の管理下にあり、伐採が禁止された水源(水道水の源)の森でもあるのだ。。小川谷上のイヌブナも、この水流の美しさに一役買っているのは間違いない。

 このイヌブナは、左の写真の通りかなりきつい斜面に根を張っている。イヌブナらしからぬ太い主幹と、他に別株の一本からなる株立ちの巨樹だが、腐食しやすいイヌブナにしてはほとんど痛みが見当たらない。樹皮は本家の白ブナの滑らかさをなく、やや粗めでざらつきはあるが一般のイヌブナよりも色白ではある。このイヌブナも、遠目には白ブナと見紛うような姿形をしている。

 小川谷の瀬音が響くこの場所で生まれ育ち、今や森の重鎮としての貫禄さえ漂わせるこのイヌブナは、これまでにどれほどの葉を繁らせ森に還元してきたことだろう。その一枚一枚が、小川谷の清流とは無縁ではあるまい。森の水をすくって飲めるほどの環境は、このような木々が気の遠くなるような時間を掛けて作り上げた循環のシステムに他ならない。

 
 撮影日

 上  2004年 11月28日

 下  2004年 11月28日


   日原の巨樹・巨木

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   イヌブナの巨樹

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